闖入者
チェコは瞬間、二人に分身し、ドゥーガの急降下を避けた。
ドゥーガは砂を巻き上げて大きく羽ばたき、上空に昇ろうとした。
頭で考えるより先に、チェコは叫んでいた。
「パラライズ!」
パラライズは、あまりデュエルで試用するスペルではない。
一瞬、動けなくするだけのスペルだからだ。
使うのは鳥打ちの時や、チェコの場合は野生動物をトレースするために利用していた。
が、巨体が舞い上がろうとする一瞬、パラライズは意外な効果をもたらした。
ドゥーガが、落ちたのだ。
「ハンザキ、ドゥーガを引き裂け!」
チェコは叫びながら、ハンザキの尾から飛び降りた。
ドゥーガも巨体だが、鳥は体の骨は、細く軽い。
ハンザキにのしかかられると、押し潰された。
「ハンザキ二号召喚!」
チェコは叫んだ。
ここでしか、左腕はきっと、倒せない。
一気に息の根を止めてやる!
ハンザキ二号もドゥーガに襲いかかる。
ドゥーガに変身していなければ、ハンザキなど敵では無いのだろうが、地に落ちた鳥など地上動物の相手にならない。
ドゥーガの羽根が、あらぬ方向へ折れ曲がっていた。
ギャァー、とドゥーガは、哀れをもよおす程に悲痛な叫び声を上げた。
それでも、まだ左腕は、鈍いハンザキの顎を交わし、空中飛び上がって見せた。
「スズメバチ、突き刺せ!」
蜂がドゥーガの頭に舞い降り、顔面に尻を下ろした。
ドゥーガは無様に砂に落ち、そこに二体のハンザキがのしかかってきた。
「あ!
貴様ぁー!」
遠くで声が聞こえた。
見ると、ブルーの服を着た細身の男が、砂を巻き上げて走ってくる。
手と足は関節を覆うような不思議なグローブとブーツ姿で、服は胴体だけを覆っているようだ。
だが砂の上を走る速度は、まるで平地を走っているようで尋常な速度では無かった。
「ファイヤ!」
走りながら、男は右手を前に突き出すと、右手が、闇に鮮やかに赤く光った。
と、ハンザキ二号の足が、バン、と音を立てて吹き飛んだ。
「再生、ハンザキ二号、そして五号!」
チェコは叫んだ。
まずいな…。
チェコは思った。
奴は、チェコよりも圧倒的に強い火力を持っていた。




