急降下
チェコは、必死に砂を滑っていく。
ドゥーガは、みるみる近づいてくる。
急斜面を滑るチェコを追っているので、ドゥーガも降下する形になっており、前の時より速度が出ているらしい。
「…チェコ、奴が追いついて来るぞ…!」
パトスは、悲鳴を上げるように告げた。
チェコは、ちら、と振り向いた。
「うわっ!」
チェコは思わず叫んだ。
ドゥーガは、今、超低空でチェコに迫っていた。
直線距離で十メートル前後の距離にドゥーガはいる。
ヤバい!
チェコは、てっきり前と同じに、上空にドゥーガがいるものと思っていた。
これじゃあ、スペルを使えない!
ドゥーガは、ぴったりチェコの背後に付けており、その気になれば一瞬でチェコを八つ裂きに出来る!
どうする!
チェコは、恐怖に背骨を凍りつかせながら考えた。
これでは二つ頭でも遅すぎる…。
奴は地形を巧みに利用して、チェコが二つ頭で避けるタイミングを潰して見せたのだ!
今は、いつでも奴の気分の向いた時に、即座にチェコを潰す事が出来る。
チェコに出来ることは、観念して喰われるか、それとも一か八か、倒れてやり過ごせるか…。
このスピードで倒れたら、ただじゃ済まないよな…。
チェコは想像する。
だが何もしなければ、死、しか無い。
そして、倒れる、つもりならば、早い方が良かった。
奴は、次の瞬間にも襲いかかれるからだ。
チェコは、軽く息を吐くと…。
横に跳んだ。
ドゥーガは、チェコの横を通り過ぎた。
チェコは上手く、真横に着地した、かに思えたが、やはり足が砂に潜り過ぎていた。
ど、と砂を巻き上げ、チェコは転倒した。
急斜面なため、チェコは凄まじい勢いで転がり続けた。
「ハンザキ!
俺を助けて!」
チェコは叫んだ。
砂を滑っていたハンザキが、尻尾でチェコを掬った。
チェコは砂まみれになりながら、ハンザキの尾に掴まった。
が…。
ギィィィ!
まるでチェコを嘲笑うような声が上空で聞こえた。
えっ、と見上げると、ドゥーガは反転するように上空に舞い上がり、空中で翼を折り畳んで丸くなった。
胡桃のような大きさだったドゥーガが、一瞬でイタチのように大きくなった。
チェコは必死に、二つ頭を使った!




