剣戟
「召喚、ハンザキ!」
チェコは叫んでいた。
ハンザキが左腕に勝てるとは思ってないが、少なくともハンザキは再生出来る。
より、しぶとく戦えるはずだ。
「バァーカ。
そんなもんで、この俺様がやられるかよ!」
左腕は突然走りだし、一瞬でハンザキの横を身軽に駆け抜けた。
チェコは、腰の短剣を抜いた。
が、当然、剣の達人の左腕に立ち向かえる技術などチェコには無い。
左腕は全く迷いなく、長い剣を振り下ろした。
チェコは、ヒヨウに教わったように体の前に剣を出し、ただ敵の攻撃を受け止めた。
暗闇に瞬間、火花が散った。
受けた!
とチェコは思ったが、
左腕が、ニイ、と笑った。
長い片刃の剣は、チェコの短剣を、そのまま、グイ、と押してくる。
な…?
剣を受け止めれば、後はスペルで対抗出来るんじゃ無かったっけ?
だが左腕は、ヤニだらけの汚い歯を剥き出しにして、笑いながらチェコに向かって、ジワジワと少しづつ剣を押し付けていく。
長い切っ先は、だんだんチェコに近づいてきた。
「く…、そ…!」
チェコは力負けしていた。
チェコがまた子供の体で、力が弱いのを見透かされたのだ…、とチェコは気がついた。
このまま力押しに、押し潰されれば、チェコの顔面は干物の魚のように真っ二つだ…。
チェコは舌打ちし、叫んだ。
「雷!」
左腕の長剣に、電気が走った。
チェコは弾け跳んだ。
あがぁ…!
チェコの身体中から、焦げた臭いが立ち上る。
だがチェコは身を起こし、左腕を探した。
左腕は、砂に頭を突っ込んで倒れていた。
チェコは叫ぶ。
「ダメージ転移!」
左腕が、倒れたまま、一メートル近く、跳ね飛んだ。
ぐあぁ…、と呻いている。
「あー、死にかけたぜ…」
チェコは唸った。
「…チェコ、てめぃ、雷を受けるなら、俺を放してからにしやがれ…」
パトスも、全身が焦げていた。
チェコは再び、ダメージ転移を行った。




