岩植物
「でも、あの壊れたのもマンドラゴラなんでしょ。
何かに使えないのかしら?」
「使うのは、あれの根なんだよ。
ダリアじいさんも、ただのおが屑だって言ってたよ」
錬金術師がそういうのなら、そうなのだろう、とキャサリーンも納得した。
川を越えると、やがて緩い登り道になり、また植生が変わってくる。
森は乾いた感じになり、少しづつ明るくなっていった。
緑色の、岩のような、変な植物があった、と思ううち、岩型の植物だらけになってしまう。
「何かしら、これ…」
「触っちゃだめだよ、火傷するんだ」
「えー、火傷ぅ?」
「熱くないけど、触ると火傷をする草なんだ。
でも、ある種の動物には、とっても美味しいように見えるらしくって、さ…」
チェコが指さした方を見ると、シカが倒れ、その体から、小さな緑の瘤が、いくつも生えてきていた。
あの岩植物らしい…。
三人は、シカの死骸の脇を歩いて進む。
パトスが、足を止めた。
「キャサリーンねぇちゃん、ここ、判る?」
チェコが木の枝で、緑色の一メートル直系程の円を示す。
「…何か、苔みたいなものが、あるわね」
「ここに、足を踏み入れないように歩いてね」
「あのねぇ、チェコ。
思わせぶりに言わないで、何かあるなら、あるって言って欲しいのよ」
「んー、じゃあ、見てみる?」
チェコが顔を傾けると、キャサリーンは頷いた。
チェコは、下がって、と手で示して、木の枝で苔を突いた。
ゴゥ…!
音と同時に、無数の触手が飛び出してきた。
キャサリーンは、絶叫した。




