逃亡
デュエルにおいては、雷も二つ頭も早いスペルとしてカウントされる。
ただし雷が放たれたとき、二つ頭やスペル無効化なら防ぐことが可能で、早いスペルの中にも速度差が存在した。
そうか…。
早い召喚カードも、こういう場合は意味が出てくるんだな…。
チェコは身に染みて理解した。
六/二と攻撃力だけが高い、早いカードが旅団で売っていて、しかも結構な値がついていた。
チェコには、ウサギ二匹で死んでしまうカードに、何故高値がつくのか、まるで判らなかったが…。
今なら、是非使ってみたい、と思った。
あれが一体待ち構えているところに、むざむざドゥーガも襲ってこないだろう。
ドゥーガは、チェコに避けられると、砂を巻き上げて飛び上がり、ままたチェコを追った。
仲間と合流できないか、とチェコは思うが、夜空は、時折、赤く光り、ドーン、ドーンと爆裂音が続いている。
そう言えば、ネルロプァで皆が、チェコはきっと狙われる、と言っていた。
プルートゥを倒したからだ。
参ったな…。
チェコの体を、汗が伝った。
あんな上空のドゥーガを落とせるようなスペルは、チェコは持っていない。
デュエルであれば、雷でドゥーガを攻撃することも出来る。
一枚では殺せないだろうがダメージは与えられる。
だが、リアルバトルでは、そもそもはるか上空の敵に雷を当てることなど不可能だった。
チェコはなるべく早く滑ろうと、直線で砂漠を進んでいたが、どうやらドゥーガの方が速度は早く、ぐんぐん追いついて来ていた。
「…チェコ…、奴が近づいて来る…」
パトスは、そう言い続けていた。
ちきしょう!
鳥って奴は、速いなぁ!
チェコは、心で叫んでいた。
「…チェコ、来るぞ…」
パトスは慌てた声で言う。
飛行で飛ぶか…?
とも考えるが、ドゥーガとスピード比べで勝てるとは思えなかった。
中途半端に空に浮かぶのは、余分に危険だ、という気がした。
そうだ、直滑降の速度で追いつかれるなら!
チェコは作戦を変え、ジグザグに曲がって滑ってみた。
足の砂に沈む深さを変えたり、かと思うとスキーのようにジャンプして急旋回したり。
思いつく限り、変則的に動いてみる。
ドゥーガは上空で、戸惑ったように小刻みに揺れていた。
うまく狙いを定められないのかもしれない。
直進も混ぜて、出来るだけ読まれないように、チェコは滑り続けた。




