奇襲
砂を巻き上げ、チェコは砂丘を疾走した。
左手に砂丘が見えてきたので、チェコはそれに向かって直進した。
チェコの思惑通り、チェコの体は砂丘を登り、そして丘の頂上からジャンプした。
「うおぉ!」
思わず叫ぶ。十メートル以上飛んで、チェコはフカフカの砂に着地した。
そのチェコの胸に、パトスが飛び込んできた。
「擦れて、足が熱くなる!」
「パトスも今度、ブーツを作れば良いね!」
笑いながら喋りながらも、右に左に、ビュンビュン飛ばしていく。
速度はたぶんスキー程は出てない、とチェコは感じた。
だが砂に足が潜るためグリップが効いて、簡単に動きがコントロール出来るため、足を深く砂に入れて速度を緩めたり、浅くしてスピードを上げたり、左右の深さを変えることで、思い通りに滑れるのが楽しい。
横の砂丘から、どん、とミカが高々と夜空に舞い上がった。
アハハハ、と楽しくなってチェコは大きく笑った。
が…。
赤い光りが、突然、チェコの真横で炸裂した。
チェコは、爆発の衝撃で、高々と砂を巻き上げて転倒した。
「わ、何だ?
噴火か?」
砂に埋まったまま背後を見ると、夜空に真っ赤な火の玉が、ヒュルヒュルと弧を描き、先の砂地に落ちて爆発した。
「キャハハハ。
まんまと罠に嵌まったわね!」
ハスキーな女の声が夜空に響いた。
「あんたらが戦争を避けてこっちに来るのは読めてたから、待ち伏せさせてもらったよ!」
砂漠の上に、ピンク色のゲバゲバしい長髪をはためかせて、赤いタンクトップと黒い革のミニスカートの女が、肩から大きな筒をぶら下げて高笑いしていた。
「さあ!
死にたくなかったら、このピンキー様にお宝を献上するんだね!」
言いながら、こぶし大の玉を、肩に担いだ筒に落とす。
と、ボシュ、と白い煙を上げながら、玉は上空に飛びながら燃え上がり、赤い光跡を引いて砂の上に落ち、爆発した。
「まずいわ、チェコ!
灰かぶり猫に狙われていたわ!」
ミカがかなり下から叫んだ。
「早く逃げなさい!」
砂を巻き上げ、ミカは滑り去った。
チェコも、おお、と立ち上がるが。
「カカカッ」
高い笑い声に振り返ると、白髪を長く伸ばした老人が、細く長い剣を持って、砂丘の上に立っていた。
「逃がしゃしないぜ、坊主。
この左腕様がいるからにはな!」




