エルフとは
「慣れれば、どうって事ないよ」
チェコは言うが、タッカーは決然と、
「僕はこの、ソバカスだらけの素顔も、この縮れっ毛も大嫌いだったんだ!
金持ちの子みたいに金髪に染めたかったけど、僕は貧乏だし…。
だけど…」
ハァ、とタッカーは溜め息をつく。
「仕事が無かったんだよね。
カードショップで働いてもたかが知れてるし、スペルランカーとして外回りの仕事も身につければ、って思ったんだけど…。
でも、解ったんだよ。
僕の体力や運動神経じゃ命が持たない。
もう、こういう仕事は絶対しないよ。
スペルランカーのランキングを上げて、それで生活するんだ!」
「街っていうのは、仕事は沢山あるが、人も多いからな。
仕事にあぶれる事もある。
山でなら、食う分だけなら幾らでも食えるぜ」
タフタは笑った。
そういう台詞は、チェコもリコ村でよく聞いた。
食べられるのだから、欲かいて働く必要はない、みたいな事だ。
田舎の誰もが言う、同じ話、同じ言葉だった。
チェコはタフタに何か言おうと思ったが、タッカーは。
「僕は街の生まれで、土地なんて持ってないんですよね。
だから街に帰ります…」
田舎に住むにしても、先祖の土地が無い、となるとなかなか厳しい。
土地を持っている者は絶対に手放さないし、山で生きる知恵は、生まれたときから山で育っていないと、なかなか身につくものではない。
「エルフになら、なれるぞ、タッカー」
ヒヨウが言って、全員が、ええっ! と驚いた。
エルフと言えば、まさにヒヨウの姿であり、タッカーの外見でエルフと言われても、逆に困ってしまう。
「え…、エルフって、よそ者も受け入れるの?」
戸惑い声のタッカーに、ああ、とヒヨウは頷き。
「結構、縁あってエルフになった者はいる。
我々も外の血は欲しいのだし、女性が多いのだが、男もわりといるんだ。
エルフとは人種ではなく、エルフの儀式を経て、身も心もエルフの神に捧げる、と誓い、入れ墨をした人間の事なのだ。
しかもエルフは街にもいるので、街住みのエルフならタッカーでも充分になれる、と言うことだ」
「へぇ、それにしちゃあ、みんなエルフの姿だよね?」
タッカーは聞いた。
「ああ。
初めは赤毛の人間も、エルフの生活を続けるうちに、髪も黒く、肌も白くなってくる。
塩杉とエルフの神のお力なのだろう」
うーん、とタッカーは唸った。
「縮れっ毛も治るかな?」
「たぶん、子は治る」
「子供かぁ…」
タッカーは、大きな溜め息をついた。




