メルトリーク
チェコは、すっかり忘れていたが、下水というシステムを知らなかった。
「地面に穴を掘って、水を流すんだよね?」
「ああ。色々、変な物が流れてるけど、逃げるときはよく使うんだよ。
ただ下水の住人、って奴がいてね」
「下水の住人!」
チェコはなにも知らないので、驚くもなにもイメージは湧かなかったが、何故かキャサリーンとミカは驚いていた。
「ちょっと待ってタッカー。
それが灰色の小さな生き物、とか黒い虫とか、そういうのだったら聞きたくないわ」
と、ミカは先手を打つ。
「アハハ。
動物は多いけどね。
ゴミを食べる生物を、わざと放しているらしいし。
でも、そうじゃなくて人間なんだよ。
あそこに住んでいる人がいるんだ。
何で言ったかな…?」
「メルトリークだろ」
と、ヒヨウ。
ああ、そうそう、と言ってから、タッカーは驚いた。
「あれ、エルフって街の知識まであるの?」
「メルトリークは町だけじゃなくて、穴に住まう生物なんだ。
話も通じるし、人に似ているが人間じゃない。
ある種の魔法生物とでも言うべきものだ。
エルフは、メルトリークと交易して地下資源を手に入れている。
たぶん、だが下水以外にも、もっと深い穴を掘っていて、そこが本当の住処だろう」
「へぇ、そうだったんだ。
僕はただの乞食だと思っていたよ」
「面と向かって言ったら命の保証はしないぞ。
彼らは、プライドが高いからな」
言ったヒヨウは、自分の手の髪の毛を見ていた。
「ほら、判るか?」
ヒヨウの髪が、何かに引かれるように、一方向に倒れていく。
「動き出した!」
チェコ興奮するが。
「しばらく待って、髪が揺れなくなってから出発しよう。
メルトリークと友達になれば、彼らが手に入れられる鉱石や石炭などの地下資源を譲ってもらえるから覚えておくと良い。
ただ、彼らは加工はしないから、鉱石を商品にする術を知らないといけないがな」




