学校デビュー
「話が込み入っているところ悪いが、ここは早いうちに針山を降りてしまいたい。
先に進もう」
ヒヨウが言った。
ああ、と皆頷き、倒れた岩の上からヒヨウが垂らしたロープを伝って降り、白い道を歩いた。
学校!
チェコはしかし、取り乱したままだ。
学校というと、同じくらいの歳の子供が集まって先生に勉強を習う、と聞いた。
たぶんグレン兄ちゃんがヴァルダヴァ卿に仕える前、ハジュクの学校に通っていて、話してくれたのだ。
友達が沢山いて楽しいぞ、と言っていた。
友達ねぇ…。
チェコはリコ村で、蔑まれて生きてきたので、同年の友人などいなかったし、容易く信じる気も無かった。
あいつらは、アホで、臭く、その日その日の風向きで、因縁をつけてきたり、ダリアの手が必要だと下手に出たり、毎日バカ丸出しだった。
そんな奴らと一年中一緒にいる?
そう考えると気が重くなる。
だがコクライノへ行ける!
良い成績を取ればアルバイトを斡旋してもらえ、カードショップにも行ける!
チェコは眉をしかめたり、垂らしたり、忙しく動かして悩んでいたが…。
ダリア爺ちゃんの手伝いをして、リコ村のアホ餓鬼と年中、顔を合わせていることを思えば、まだましか…。
と、結論した。
それにつけても…。
チェコは思った。
早くスペルカードを揃え、アホに因縁をつけられた時には、思い知らしてやる、ようにしなくては!
それは重要だった。
リコ村では、チェコは貧しかったし、親がいない、体が小さい、などの理由で、最底辺の子供と見なされ、蔑まれていたが、コクライノでは、そうならないように立ち振舞い、必要ならば相手を打ちのめさなければいけない。
そのためには、負けてはいけない!
成績でも喧嘩でも…。
チェコは再び、うーん、と唸った。
体は丈夫で、運動神経も優れたチェコだが、喧嘩は強くないのだ。
パトスもいるから、そうそう遅れを取ることはない、とは思うのだが、ここは重要だよな…。
体の小ささは、スペルで補わなければならなかった。
俺はもっと、強くならないといけない…。
いつの間にかチェコは、学校デビューに想いを馳せていた。




