エクメルの起床
なんだか話が急過ぎて、チェコはついて行けずに戸惑った。
ついさっきまではハジュクで野宿をしてでも生きよう、と考えていたのに、急に名門学校に入る、などと、嘘でも考えつかないような話を聞かされたのだ。
「え…、でも俺、カードを揃えないと…」
ともかく、本当のデュエルで戦えるデッキが、チェコには無いのだ。
学校へは行くにしても、カードは揃えなければならない、そこは別の話だ!
と取り乱しながらもチェコは考えた。
「まー、安いカードぐらい、お祝いに上げても良いけど、後はバイトでもして稼ぐのね。
あそこは、学校でバイト先を斡旋してくれるわよ。
ただ成績が悪いと、学校の恥になる、って斡旋してくれなくなるから気をつけてね」
成績!
チェコは感電したように驚いた。
今までの人生で、成績、などと言われたことは無かったのだ。
あ…、ああ…、とチェコは、言葉が意味を紡げずに、声帯を震わせた。
「それならば、大丈夫なのである!」
急に胸元から声がして、チェコは飛び上がった。
「エクメル!
今まで、何、寝てたんだよ!」
チェコは責めるが、エクメルは、
「能力を五十%アップして戦闘モードに入り、三発の暗黒弾を撃ったので、充電モードになっていたのである」
平然と摩魔石は答えた。
確かに…。
陰狼とブーフと戦ったとき、そんな事を言っていたが…。
「今は、もう次の夜だよ、いくらなんでも長すぎるんじゃないの?」
「完全に充電をしないと、我のような高級品は稼働出来ないのである。
これから錬金術を習うのなら、よく覚えておくといい、のである」
むぅ…、とチェコは唸り、改めてエクメルは嫌いだ、と感じながら、
「で、エクメル。
成績は大丈夫って、どういう事?」
「我は魔石の最高級品。
主の家庭教師ぐらいは勤まるのである」
「あら、チェコ君、良かったわねぇ。
この魔石が先生なら、きっと良い成績を取れるわよ」
ニタ、とキャサリーンは笑った。
チェコは唸ったが…。
コクライノへ行けるのか…。
不満げな顔をしながらも、チェコは喜んでいた。
パトスだったら、つい尾を振ってしまっていただろう。
コクライノに住み、そしてタッカーやミカとバトルシップにも行ける!
俺…、スペルランカーになれるんだ!




