ドリュグ聖学院
「が…、学校…!」
チェコの声が震えた。
色々、今まで散々に考えていたのに、急に横から、そんな事を言われたって…。
ちょっと怒りも湧いてくるが…。
「え、でもリコ村に学校なんて無いよ?」
キャサリーンは笑って。
「私の知り合いが、コクライノで学校をやっているから、そこへ入れるわ」
コ…、コクライノ…?
チェコは、眩惑を覚えるほどの衝撃を受けた。
どうしても行ってみたいが、現実には一生行けないかもしれない、と悲しく考える程に、チェコが憧れた街の名前だからだ。
そこは、リコ村には無い全てが詰まった光輝く都市であり、街を移動するのにも、おしゃれな路面電車に乗るのだという…。
コクライノに行けるのか!
という喜びが、チェコの体を駆け抜けた。
だが同時に…。
「俺…、ダリア爺ちゃんに、錬金術を習わされるの…?」
用心深く、チェコは聞いた。
チェコはスペルランカーになりたいのだし、錬金術は、とんでもない量の本を読まなければならなかった。
ダリアの家には、本棚が五つもあり、そこにゴッソリと本が積まれていた。
「別に、錬金術の基礎も習うと思うけど、数学とか文学とか、スペル教学についても基礎から習えるわよ」
本当なら退屈そうな学校など、一蹴したい話たったが、コクライノへ行ける、というのは、あまりにも素敵すぎる条件だった。
「でも家は?
キャサリーン姉ちゃんが泊めてくれるの?」
アハハ、とキャサリーンは笑い、
「ドリュグ聖学院には寮があるから、あなたは寮生になるのよ」
ん、とチェコは思案した。
そういう感じなら、学校を抜け出してショップ…、そうタッカーの言っていたバトルシップにも行けるかもしれない!
「えー、チェコ、ドリュグ聖学院の生徒になるの!
名門じゃないの!
ちょっと凄いわよ、それ!」
ミカが騒いだので、
「え、凄いの?」
とチェコが問うと、タッカーが、
「下町生まれの僕には縁の無いところだよ。
コクライノは下町と山の手、二つに分かれてるからね。
ドリュグの生徒、ってだけで、大人でも敬語を使うぐらいさ」
へへへ、とタフタも笑い。
「坊主も、あのごっつい制服を着たら、それなりに見えそうだな」
ミカは、髪のトリートメントを急がなきゃ、と慌て始めた。




