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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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白い花

動物森の奥に入るにつれて、森は暗く、木々には蔓草が垂れ下がり、白く輝く小さな花を無数に咲かせた膝ぐらいの高さの草が一面に広がりだしていた。


「きれいな花ねぇ…」


「触っちゃだめだよ。噛みつくから」


ぎょ、としてキャサリーンが、よく花を見ると、よろよろと迷い込んだミツバチが一匹、飛んできた。

清楚に花を垂れていた白い花弁だが、ミツバチが横を通り過ぎようという一瞬、突然、花びらを大きく開いた。


透けるような白い花びらの内側には、輝く鋭い牙があり、ミツバチを二つ折りに噛みしだいた。


次の瞬間には、ふたたび優雅に花を傾かせた姿に戻ったが、その花びらには、ミツバチの足が飛び出し、痙攣していた。


ひっ…、とキャサリーンはのけぞり、


「…エグい花ねぇ…」


「うっかり足を近づけないよう注意してね」


キャサリーンは引き攣り、


「そういうことは、先に言ってくれないかしら…」


と唸った。


「今、言ってるじゃん」


チェコは、気軽に返したが、瞬間、パトスの足が止まった。


頭上から、バサリ、と蔦が、偶然に茎が切れた、とでも言うように、半円を描きながら垂れてきた。


「触らないで。

鳥打草だよ」


「鳥打草?」


「凄っごいベタベタで、触ったら、もう取れないの。

取ろうともがくうちに、身体に蔦が絡まって、そのまま養分を吸い取られちゃうんだよ。


ほら、あそこのぶら下がった蔦にも、フクロウが絡まっているでしょう」


暗いので分からなかったが、森から垂れ下がった蔦には全て、鳥や猿や、どうやって捕まったものか巨大な大蛇まで、蔦と一体となってぶら下がっていた。


獲物を捕らえそこなった鳥打草は、そのままグニャグニャと頭を切られた蛇のように蠢き続ける。


「捕まったら厄介だから、避けて進むよ」


足元には噛みつく花、頭上には鳥打草、それらを縫うようにチェコたちは森を歩き続けた。

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