本当の僕
白い道の途上に、横倒しになった針岩が道を塞いでいた。
道を塞ぐ岩は、根元では無いため、高さは二メートルぐらいだ。
「まあ登れるだろうが、用心してロープを張ろう」
ヒヨウは身軽に岩に乗り、ロープを垂らした。
チョコやウェンウェンは楽々と登るが、タッカーは苦戦した。
「もう!
本当にタッカーは腕の力が無いわね!
カードより重いものを持ったことも無いんでしょう!」
ミカは癇癪を落とす。
「ごめんごめん、ミカちゃん。
僕って、モテたいから筋力とか、わざと鍛えないし、常日頃から少食にしているから…」
ジタバタとタッカーが岩の縁に捕まってもがいていると、タフタがタッカーの尻を持ち上げた。
急に尻を触られて、ひ、と叫んだタッカーは、
「タフタさん、出来れば足を持ってくれないかな…」
と、ひきつり笑った。
「ダメだな。
足じゃ力が入らんし、靴を押すと、尖った石が挟まってる可能性もある。
こういう場合は、尻を押すもんだ」
ふん、とタフタは鼻を鳴らして、
「都会の若者ときたら!」
「筋肉があるとモテないの?」
チョコは聞いた。
「タイプだよ、チェコ。
スポーツマンは筋肉があってもいい。
僕はボーイッシュに細くして、それが似合う服を選んで着るんだ。
体を含めて、全身をコーディネートしないとね」
額から汗を滴らせながら、タッカーはとくとくと語った。
「そんなツラじゃ、ねーだろーが!」
タフタが突っ込むが、タッカーは。
「今は、そうですよ」
と、むしろ胸を張る。
「でも町に戻れば、少しメークアップして、この髪も美容院でサラサラのストレートにするんです。
すると、ほら」
タッカーの財布には、一枚の写真が入っていた。
「うわぁ、これ、写真って奴?
複写のスペルと違うよね?」
チェコは驚き、中の写真を見た。
中々の美少年が、決めたファッションでカードを構えて写っている。
ふふん、とタッカーは目を瞑り、
「新聞社が、撮ってくれたんだよ。
本当の僕はこれで、今は、山の中だから、仕方なく、こうしているだけなんだよ!」
パチンとウインクしたが、ただのタッカーなので、チェコは心の中で笑ってしまう。
「全く街のガキときたら!」
タフタは毒づいた。




