星の囁き
首都コクライノ!
それはスペルランカーの国内大会の決勝大会が行われる場所でもある。
ヴァルダヴァ宮の水晶の間、が決勝の舞台で、そこに各地域で優勝した猛者や、特筆すべき働きを示した注目スペルランカーが百二十人、集められる。
コクライノには、世界中のスペルカードが集まるばかりではなく、最新ファッションや音楽、リコ村には無い世界中の味も演劇などのエンターテイメントも本も、あらゆる文化が入ってくる。
金か…。
それがチェコの背中に、急に存在感を増して、重くのし掛かってくる。
コクライノは、果たしてお金があれば行けるのだろうか?
タッカーはコクライノの生まれだし、ミカにはスペルのランクがある。
だが、チェコには何もない…。
一気に跳び越えようとするな…、と、よくダリア爺さんが言っていた。
人間は、そう考えて、転ぶものなのだ、と。
一段づつ階段を登って行けば、いずれ山も越えられる。
階段が無かったら、自分で作れば良いだけだ。
だが、崖をよじ登ろうとする馬鹿は、その場は登りきったとしても、いつか落ちる。
いつの日か落ちるのは必然なのだ、と。
チェコは、だが…。
心は、すぐに、タッカーやミカと一緒にコクライノへ行きたかった。
が…。
チェコは依然、リコ村の孤児のチェコで、父や母の事も、少しは判った、とはいえ、だからと言って金銭的な支援があるわけでも、後ろ楯になってくれる人がいる訳でも無かった。
あと一年、チェコが子供だったら判らないような事も、チェコは気がつき始めていた。
チェコには、金も、住みかも、働く場所も、頼れる人も、全く無いのだ。
頭上、空じゅうを覆い潰す明る過ぎる星たちが、その事をチェコに囁いていた。
ヒヨウについていく、と言っても、俺はエルフにはなれないし、タッカーに着いていったところでコクライノの住人にはなれない。
働いて、金を稼げない事にはなにもできないが、まだ子供過ぎるチェコは、体でお金を稼ぐ事すら難しかった。
スペルランカーになりたい…。
だけど…。
カードを買うのにも、結構なお金がかかるのだ…。
買ったカードを自分のデッキに入れてみて、それで上手に動けば良いのだが、そうなるとは限らない。
そういう一枚のカード次第で、バトルは様相を変えてしまう。
飛行解約デッキ、のブームがあった。




