バトルシップ
それがスペルランカーとしてのチェコの最大の弱点だ、と自分でも判っていた。
ヒヨウやタッカーの年齢なら、自分で稼げるし、二人とも、事実、働いているのだろう。
だがチェコは、やれる事と言えば、せいぜい鏡を作るぐらいで、ダリア爺さんを手伝っていた、と言っても錬金術師な訳でもない。
たとえハジュクに行ってカードショップに入ったところで、ポケットには、ダリア爺さんのくれた小遣いを貯めた銅貨十二枚と銀三枚があるだけだった。
俺みたいなチビ、働けるかな?
雇ってくれる、と言うなら、どんな汚れ仕事でもするつもりだが…。
一枚のスペル無効化で、いくらかかるのだろうか?
スペル無効化と石化は、五枚は必要だった。
全ての戦いに五枚入れなくとも、入れなくてはならないタイプの敵は必ずいるからだ。
後は、ともかくカードの知識も、ショップへ行って蓄えなければならない。
どんなガードが売っているのか、それすらチェコはトカゲ人間の旅団でしか知らなかった。
しかし旅団は、普通の民家を相手にする商売なので、日常のスペルカードを主に扱うもので、スペルランカー用のバトルガードなどは少ししかない。
それでもチェコは、トカゲ人間のキャンプが来る毎月五日の夜には、真夜中の草原から岩山を歩いて、キャンプに行った。
ダリア爺さんのお使いもあったので、帰りは大荷物になったが気にはならなかった。
ハジュクのカードショップ!
それは、行けるとも、数日前までのチェコは考えもしなかった夢の場所だ。
だが…。
ポケットの中は空に等しい…。
それがチェコの現実だった。
ハジュクって、野宿出来るところはあるのかな…。
宿、という物があるのは知っていたが、とても泊まれる金は無かった。
野宿をし、働き、なんとかカードを揃え、デッキを組み上げる…。
それが今の、チェコの野望の全てだった。
「まー、ほら、さっき言ってた森と闇の修験者とかがあれば、チェコのデッキもきっと強くなるよ」
しばらく黙って考え込んでいたのを心配したのか、タッカーが話しかけてきた。
問題は、買う金なのだが…、と思いながらも、チェコは微笑み、
「そうだよね。
ハジュクのカードショップ…、へ、早く行きたいな!」
言うが、ミカが、
「ハジュクねぇ…。
小さな町だし、カードショップのレベルは低そうね。
この辺りなら、やっぱりコクライノのバトルシップ、じゃないかしら」
タッカーも、
「へへ、僕も、バトルシップが行きつけのショップだよ。
バトルスペースもあって、いつでも誰かとバトれるんだ。
チェコもコクライノに来たら、案内してあげるよ」




