天使
「へー、やっぱり大会クラスになると、ドラゴンとかも出てくるんだね」
チェコは感心するが、ミカは、
「まー、コブドドラゴンあたりは、まだ小者よ。
世界大会ともなると、何百種類のドラゴン、クラーケン、ベビモスとか、何でもアリよ。
中でも最凶と言ったら、やはり天使でしょうね」
「天使かぁ!」
チェコとタッカーは、声を合わせて叫んだ。
「やっぱり天使が強いんだね」
チェコの言葉にミカは頷き、
「魔法が通じない、とか逆に、魔法しか通じない、とか単純な強さ以外のところが厄介なのよ。
天使を持っている、って判る相手には、天使を出す以前に何とかしないと必負でしょうね」
そんなに強いのか…、とチェコは驚いていた。
スペルショップにも行ったことの無いチェコは、本の知識以外のデュエルの話には疎かった。
「じゃあ、場に出たら!もう止められないんだ!」
いや…、とタッカーは言う。
「デュエルって言うのは、これを出したら必ず勝つ、みたいな風にはなってないんだよ。
そもそも光のマジックを封じるスペルや、天使も殺せるスペルもあるよ。
ただ、天使が出ない、と思って何の対策もないときに出されると、お手上げ、って話なんだよ」
「あんたみたいな、自分の攻め、しか考えていない奴は、そういうシステムデッキに簡単に捻られるのよ」
「システムデッキ?」
聞きなれない言葉に、チェコはポカンとオウム返した。
ミカは人差し指を持ち上げて、
「要はあたしのデッキもシステムデッキなのよ。
設計された、全て一つの意図の元に組み上げられたデッキ。
攻撃は、同時に防御的な意図も持ち、手札を使えなくする事で、攻撃と防御の何割かはシステムにより防げるの。
後は数枚入っている性能の良い、早い召喚獣で叩いて終わり、という訳よ。
これなら、ドラゴンも天使も怖くないでしょ。
きちんと設計されたデッキは、それほど沢山の召喚獣を必要としないのよ」
うーん、とチェコは頭を抱えた。
確かにミカのデッキは、相手がどんなデッキでも苦にはしなさそうだ。
それに比べると、チェコのデッキは、遅く、重く、手札も足らなさ過ぎた。
「まー、チェコ君のデッキに弱味があるのは事実だけど、あのプルートゥを倒したのも、また事実なのよ。
あまり心配しなくとも、ショップである程度のカードを揃えれば、まだまだ強くなるわよ」
とキャサリーンがチェコを慰めた。




