フルーツフレーバー
チェコたちはトンネルに引き返し、階段を下った。
滑らかに岩を削ったアーチ型のトンネルが、足元は階段になり、時折右に折れたり、左に曲がったりしながら続いていた。
やがて数分間トンネルを下ると、巨大な岩と岩の間に出る形で、階段は終わった。
地面はほぼ岩で、時折、木の橋で岩の隙間を埋めてあった。
と、思うと、行く手を巨石が塞ぐ。
が、その都度、ヒヨウは道を直角に近い角度で、ひょいと曲がった。
そこに道は続いていた。
「こりゃあ、とってもエルフじゃなけりゃあ判らないな」
タフタも降参して言った。
「覚えてしまえば、たいしたことでは無いのだかな」
とヒヨウは、涼しい顔で言葉を返す。
ふと気がつくと、空には満天の星が広がっていた。
「ひゃあ。
山の星空って、凄いな!」
チェコは歓声を上げた。
「ここが山羊の道だ。
さて、ここからは道が判りずらいので、俺もゆっくり進むが、皆も前の人間の歩くあとを良く見て続いてくれ。
チェコ、星の観賞は今度にしてくれよ。
さっきの連中のようにはなりたくないだろ」
山羊の道は、文字通り岩と岩の間を歩く、複雑な道だった。
巨大な岩石を回り込んだ、と思うと、岩が階段状に連なった険しい上りに出る。
そこから、岩の側壁のわずかな出っ張りを、渡したローブを頼りに横歩きに歩き、そこから崖をローブづたいに登った。
「これっていうのは、本当に安全なのか?
片牙に狙われそうなもんだがなぁ」
タフタは、崖を登ったところて疑問を呈した。
「ローブの場所は大丈夫だ。
強風などが吹くと横にずれて危ないこともあるが、幸い今は無風なので良かった」
と天気を寿ぐヒヨウの背後で、タッカーは汗みどろになって崖を登り切っていた。
「あー、僕、汗臭くないかな。
こんな事ならコロンを持ってくるんだったよ」
「おい、兄ーちゃん。
男が汗なんて気にすんなよ」
タフタがケチをつけるが、ミカは、あら、と言い、
「あたし身だしなみって大切、と思うわよ。
タッカーは、まだ子供だから、爽やかなフルーツフレーバーとかが可愛いわ」
と、ニコニコ語った。




