山を歩く
「だけど、道をそれて片牙には襲われないの?」
チェコが聞いた。
「ああ。
まず、昼間は大概は平気だ。
それから、片牙って奴は、刺のある木や、針のような葉を持つ木には近づかない。
人が道を外れる場合は、そういう木のある場所を選んだり、そうした木を植えれば、奴は入ってこれない。
俺らは木を熟知してるから山を歩けるわけだ」
タフタは語った。
「なら、木の生えている場所は、
だいぶ安全なんだね」
チェコは言うが、ヒヨウが、
「百パーセントではない。
それには地形や植生等が複雑に影響してくるので、素人が森で片牙に襲われたりするのだ。
山では、山を知る者の案内を得るのが一番だ」
「そーだぜ。
山って奴はな、一見、安全な森に見えても、片牙が伝ってこれる岩場が近くにあったり、同じ沢でも、こっちがしは神木があるから安全だが、対岸は似たような景観でも襲われる、とか色々あんのさ。
そーいうのは、山に生きてるもんでないと読めないものなのさ」
タフタも言った。
「俺は、だから針葉樹の森に小屋を建てたかな」
ウェンウェイも話した。
ヨロヨロと、タッカーが戻って来た。
「長かったな、大丈夫か?」
ヒヨウが問うと、青い顔で、
「あ…、あんな崖に、よく足場を作るよね…」
と、声を震わせた。
「エルフの工業技術は正確、精密だからな。
あのくらいはワケは無いんだ」
「面白いの?」
チェコは、跳び跳ねるように立ち上がった。
「真っ暗だから、何も見えないよ」
タッカーは言うが、チェコはトイレに走っていった。




