山歩き
「まー片牙が俺たちを忘れるまで、しばらくは休もう。
そうだ、この囲炉裏の火が聖火だから、ランタンの火を消して、こっちの火を移した方が良い。
ほんの僅かだが、闇も広く見える」
ミカは水筒の水を飲み、
「ハァ。
本当にただの水になっちゃうのね」
「そうだ。
水はここにも貯めてあるから、一息つくと良い。
少し干し飯を戻して、おじやでも作ろう」
ヒヨウは立ち上がり、鍋の用意をした。
「山の道を外れたところって、入れるんだね」
チェコは質問した。
「まぁ地形を覚えていれば、迷わんのさ。
山の人間は皆、この辺の地形を覚えているから、ウルガ沢を越えて西の三本岩へ渡った、とか言ゃあ、あの辺か、と判る訳だ。
平地の奴ァ、道がないと歩けないからな。
良い木も、良い草も、
道の無い場所にあるもんなのさ。
ここいら辺は木が生えねーから樵は、あまり詳しく無いが、エルフは神事をするから、よーく知ってんだ。
砂漠へ向かう道なんて、俺には判らんからな」
と、タフタは話す。
「地形かぁ…。
こんな広い二つ角山脈の地形を覚えるなんて、凄いね」
「ま、暮らしてりゃあ、少しづつは判るもんさ。
爺さんだって、住んでる近くの地形ぐらいは判るだろ」
ウェンウェイは笑い、
「何度も死にかけながら覚えたかな。
俺は道から離れて住まないといけなかったから、最初は大変だったかな。
家も、何度も崩れ、何年がして、まぁ住める小屋が出来上がったかな。
そうしながら狩りを覚え、畑を試し、毛皮を売ったりするようになって、始めて猟師と話せるようになり、手伝ってもらって今の丸太小屋が建ったかな」
「なかなか、そこまで我慢出来ねーよな。
ハムやチーズも上手なもんだ」
とタフタがウェンウェイを誉める。
「俺は、本の知識があったから、やり方は知っていたかな。
何度か失敗したが、知識は大切かな」




