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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
423/688

いる!

山頂からしばらく降りていくと、道は不意に崖に飛び出す。


巨人が道を殴り飛ばしたかのように先は鋭く窪み、その先は暗闇で何も見えない。


「こっちだ」


崖の左のきわに、微かに下る道があるらしい。

ヒヨウはスタスタと、降りていってしまう。


チェコが、ランタンをかざして覗いてみると、下に、三十センチ程の丸岩が一個、闇の中に浮かんでいた。

精一杯にランタンをずらして伸ばしても、その先はまるで見えない。

真っ暗闇に、石だけがポッカリと浮かんでいた。


トン、と岩に足を乗せると、道側に、崖を抉るように、溝が足元を斜め下に走っていた。


チェコは再び、トンと足を溝に落とす。


溝は、階段になって下に続いていた。

幅は五十センチ程で、右手は崖で、その外側には月も星も無い闇だけが広がっている。


後ろでミカが、


「ほら、タッカー行きなさいよ!」


と怒っていた。


「えぇー…」


と怯えた声のタッカーに向かって、


「大丈夫。

ぐるっと回って降りるだけだよ!」


チェコは励ます。


「大きな声を立てんなよ。

戦争中だし、ピンキーだっているんだぜ!」


と、タフタが強めに囁いた。


そうだった、とチェコは口を塞ぎ、代わりに岩の外にランタンを出し、揺らした。


タッカーの靴が岩に乗ったのを見て、安心したチェコが先に向かうと、ヒヨウは溝の先に立っていた。


「もう大丈夫だよ」


「急ぎたいのはやまやまだが、それで怪我でもしたら、もっとスピードダウンになる。

少し、歩く速度を弛めよう」


「、、チェ、、コ、、」


チェコの肩の上に乗ったちさが、囁いた。


「あ、ちさちゃん、どうしたの?」


「、、近いわ、、片牙が、、近くにいる、、」


チェコとヒヨウは顔を見合わせた。


「エルフ道に片牙は入れないはずだが、奴は岩でも崖でも、自由に歩き回れる。

皆にも伝えよう」


タッカーたちが集まると、ヒヨウが話した。


「たぶん岩の上か下か、その辺りに居やがるんだな。

でも、臭いはしねーな…」


タフタの言葉に、パトスが叫ぶ。


「いや…、上に…いる!」

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