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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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横道

杣人の村の男たちは、皆、怒っていた。


背には弓矢を背負い、手には槍や、穂先が斧になった長斧、穂先が鎖付きの鉄球が付いたモーニングスター等を持ち、腰には剣、胴当てや手甲、盾等を持っていた。


松明の他、火を燃やした灯火台をいくつも立てて、山頂を警戒していた。


さすがにチェコのような年齢の者はいないが、ヒヨウやタッカーに近い年の若者は何人か、緊張した面持ちで立っていた。


「あーやって寝ずの番をするのかな?」


タッカーが、小声で聞いた。


「多分、深夜には交代が来るだろ。

体力が尽きては戦争に勝てないからな」


タフタが答える。


「ねぇ、あーやってて、片牙は襲わないの?」


ミカが聞くが、ヒヨウが、


「松明や灯火台があれだけ燃えていると、近づいて来ない。

臭いに気づいたら松明を灯すだけでも遭遇確率はだいぶ下がるんだ」


「本当かよ…?」


タフタの言葉に、


「無論、全く会わない、という事は無い。

だが強い光りが嫌いなのは確かだ。

火に塩を落とすのも、塩が燃えるときにパチパチ閃光が光るのが片牙を遠ざけるのだ。

同じように松明の強い光りや篝火等も、通常は嫌うが、なにせ片牙に絶対というものはないので、半分に聞いてくれて構わない」


「まー、片牙だからな、しゃーないな」


タフタは、ボソ、と言った。


ヒヨウを先頭に、一行は杣人の村の人々を離れて、山頂から突き出した、ネルロプァの枝より高い大岩に登っていく。


近づかないと判らないが、大岩の根本に、微かな足場があり、そこから大岩を回るように、横に降りられる道があるようだった。


垂直に突き上がる岩の壁の足元に、少し余分に岩が突き出ている、と言うだけの道だ。


だがそんな足場を数十メートル進むと、だいぶ道らしい広さになってくる。


大岩側の壁面がなだらかになってくると、崖側もなだらかになり、やがて岩と岩の間を歩くようなルートになる。


「こういう所って、ピンキーに襲われないのかな?」


チェコの問いに、ヒヨウは、


「たぶん、だが、今、騒ぎを起こすと杣人の村の気の立った連中が駆けつけ、乱戦になりかねない。

連中も、そこまで馬鹿じゃ無いだろう」


スタスタ歩きながら笑った。



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