地形デッキ
土石流は、全てを破壊する強力なリセットボタンだ。
ただし全てを壊すので、自分の手も流れてしまう。
ただチェコは、大いなる幻想、を持っているので、もし同じターンに同時に使えれば、自分のデッキを守ることは出来る。
問題は、二つ同時に使えるアースがチェコには無い、と言うことだ。
エルミターレの岩石で召喚獣をタップしてアースを作るか、もしくは補食のアースを大喰らいの壺で貯めて運用すれば同時発動も可能だったが、それは相手の一枚のスペル無効化で崩される。
とはいえ持っていて損になるカードでは無かった。
エルミターレの岩石は、チェコは一枚持っているが、アイテムの破壊は大会に出るようなトーナメントデッキなら必ず揃えているはずのカードだ。
そこで二枚目の岩石は意味を持つ。
敵も、勝つ手段は用意しているはずなのだ。
だから全てを妨害スペルに費やす訳にはいかない。
なので五十枚、全てを封じられる事はない、と踏んで、二枚目、三枚目のキーカードは揃えておいた方が良い訳だ。
チェコはホクホクと、カードをスペルボックスに入れ、皆の所に追い付いた。
横に平たい楕円の道は、緩やかに登っているようだった。
「挟撃と言っても、背後にゃあ何も無いんだぜ?」
タフタは、左右に気を配りながら言った。
「そうなんだが…、何しろ灰かぶり猫だ、何だってする。
例えば、大量のネズミを俺たちに気がつかれないように、枝の外側に貼り付かせておく、ぐらいはするかもしれない」
「この狭い通路に右手と左腕が待ち構えていたら、カなり厄介よ」
ミカも唸っていた。
「まー、しかし、いくら奴らだって、ネルロプァで暴れたりしたらどうなるか、ぐらい判ってるだろ」
タフタは言う。
「暴れるとどうなるの?」
チェコが聞いた。
「そりゃあ、例のタウトゥンに捕まって、即座に外に放り出されちまうさ」
タフタの答えに、チェコは驚く。
「え、あいつら、そんなに強いんだったの?」
「ここは空気が薄いんだ。
俺たちは山頂でゆっくり寝ていたから体が慣れたが、最初に登ったときは、かなり辛かったはずだ。
ここで激しく動くと、とんでもなく消耗する。
が、タウトゥンは全然平気なのだ。
デッキでいうなら、さしずめ高所地形デッキというところか。
この場所でならタウトゥンに誰も勝てない」
どヒヨウが教えた。




