タウトゥン
ほどなくチェコたちは真っ暗な、ネルロプァの枝の内部に入った。
しばらく登り階段が続いていたが、やがて木をくり貫いた、楕円形の平たい通路に出た。
「うわぁ。
疲れたぁ…」
タッカーは、その場にペタンと座り込んだ。
枝は、幹ほどは揺れていない。
ただ風が吹く度、弛い空気の流れが通路を流れているようだ。
「少し休むか」
もう座り込んでいるタッカーに苦笑しながら、ヒヨウは言った。
「しばらく歩くと、僅かだが水が手に入る。
休んだら、そこまで進むぞ」
食べ物は、まだ残っていたが、飲み水は少ない。
チェコも、木の通路に座った。
通路は、皆のランタンの灯りで琥珀色に染まり、触ると、良く磨かれた床板のように艶やかだった。
「少し暖かいね」
「ああ。
何より風が少ないし、ネルロプァは太陽の熱を蓄えているから、真冬でも上着がいらないくらいなんだ」
ヒヨウが、チェコに答えた。
「へー、なんだか、住みたいみたいだね」
チェコは、ポンポンと壁を叩いた。
楕円形の通路の幅は三メートル程だ。
決して広くはない。
ケケ、とタフタは笑った。
「いるんだぜ、住んでる奴も…」
「えー、そうなの!」
チェコは驚いた。
「まぁ、な…」
ヒヨウは歯切れ悪く、肯定した。
「タウトゥンたちはネルロプァに住んでいる共生生物で、高い知能があり、ネルロプァを管理し、自分達もネルロプァの恵みで生きている。
人に害は与えないが、意思の疎通は一部のエルフにしか出来ず、俺には無理だ。
だが…、あー…。
つまりこの標高の中で生きるという事は、全てを無駄なく利用しなければならない。
つまり彼らは、俺たちの便や尿を欲しがる、という性質があるんだ。
そこは驚く前に教えておく」




