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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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妨害スペル

チェコはリコ村から出たことが無かったので、本物のデュエルを生で見た経験は無かった。


グレンが村に帰ってきたときに話を聞いたり、ダリアの取っている新聞の記事を読んだりしているだけだ。


後は、チェコのバイブルでもある初等騎士向けのスペルガイドのデュエル編を読み込んで、自分なりに夢想していたのだ。


妨害スペルも数々あるのは、スペルガイドで知った。

スペル無効化や、全ての色が使える灰色のスペル、石化、召喚獣を一体石にする、やエンチャント破壊の他にも、バブルも妨害スペルの一つだし、召喚獣を眠らせる、夢の調べ、やチェコも一枚持っているエンチャント反逆、も、そのカテゴリーの一枚である。


草原の祈り、はエンチャント全てを破壊し、平和の使節は、召喚獣の攻撃も防御も、またそのプレイヤーの直接攻撃も禁止し、塹壕は飛行出来ない召喚獣の攻撃を禁止する。


雷などの攻撃スペルも、飛行する召喚獣が攻撃状態になると死亡するエンチャント熱帯性低気圧も、相手の思う攻撃をさせないというのは、それ自体一つのデッキタイプと言っても良かった。


その手のデッキは、チェコの大量のアースを生み出すデッキには天敵になりえることは、チェコも嵐の夜に気がついた。


召喚獣の動きを止められると、チェコのデッキは働かないし、キーカードを失うと動かない。


バイブルによれば、その対抗策としては、リセットと呼ばれるカード群がある。


森なら土石流、全ての召喚獣とマジック、アイテムを破壊、

闇では死の唄、全ての召喚獣を殺す、などがある。


殺す、という表現はカードテキストとしては珍しいが、闇にはアンテッド、つまり元々死んでいる召喚獣があり、それらは一般的な破壊、なら消滅するが、殺す、であれば範疇外なので、自軍を保ったままリセットが出来る。


チェコは、リセットを口にしようとするが、ミカは先回りして、


「大会でリセットなんて、ほとんど打ち落とされるだけよ。

確実なのは、通るスペルで、相手よりも早く勝ちに行く事よ」


大会では一種類のガードを持てる上限が五枚と決まっていた。

そのため、相手の全てのガードを場に出させない、ということは難しい。


だがスペル無効化に似たカードは幾らもあるので、エンチャント無効化とか召喚獣無効化などは、誰でも持っているものとして戦った方が良かった。


上手なプレイヤーは早く勝つ、というミカの理論もバイブルに載っている。


つまり、デッキの全てを晒すことなく勝ってしまえば、対抗策も打ちにくくなる。


動きが判らないが強い、かつ早い、というのは大会を制覇する上では重大なポイントなのだ。


大会ではカードの総数も五十枚と決まっているため、デッキの秘密を保持しつつ、相手のデッキの本当の動きを読む、ことは勝つ秘訣であったが、簡単な事ではない。


チェコも、元々の自分のデッキと、ミカに貰ったデッキを合わせれば、なんとか五十枚のガードは揃う。


ただし大会で戦うためには、チェコ自身も妨害スペルを揃え、デッキが理想的に動くように召喚獣の研究などもしないといけなかった。


せめて五枚のスペル無効化は基本中の基本だった。


夕方まで休んだため、今度のネルロプァの登りは、前よりもずいぶん楽だった。

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