灰かぶり猫
ヒヨウは、自分のナイフを出して見せた。
「いいか、
突然の攻撃を受けたとき、刀を横にしてはいけない。
剣というのは、いわば磨いだ鉄板だから、横にすると曲がったり折れたりしやすい。必ず立てて敵の攻撃を受けるんだ」
と、自分の胸の下辺りに腕を軽く曲げたくらいにナイフを立てて構えた。
「片手で持っても良いのだが、敵の強い攻撃を受けるには、最初は両手で持つべきだろう。
心臓の前に剣を置き、悪戯に動かさない。
感じとしては胸と腹を守る、くらいのつもりでいい。
手足などは、少々切られても回復スペルで治せばいい、からだ」
チェコは自分の腕の前に剣を構えてみる。
「そんなに垂直に構えては、剣が動かしずらいだろう。
もっと自然に、斜めに構えていい。
では、ちょっと練習してみよう」
ヒヨウは自分の荷物から一本の棒を取り出すと、ひょい、とチェコを打つ。
チェコは、カン、と棒を弾いた。
「剣が横になっているぞ。
敵の刃と直角になるように」
「あら何?
戦闘訓練?
まぁ、赤竜山へ行けば木地師とか柄の悪いのが多いから、大切かも知れないわねぇ」
キャサリーンが、ふぁー、と欠伸をしながら起きてきた。
「それだけではない」
ヒヨウは、ミカから聞いた灰かぶり猫たちの事を告げた。
「あらやだ。
あんなのまで嗅ぎ付けて来てるの!」
キャサリーンも灰かぶり猫を知っているようだ。
「あいつら、プルートゥとか名のある傭兵たちの動きにはとんでもなく敏感なのよ。
必ず張ってるものなの。
たぶん今も、遠くから見てると思うわ」
「え!
見られてるの!」
チェコは驚いて叫んだ。
「まぁ、灰かぶり猫たちなら、それぐらいするでしょうね…。
騙し討ち、とかが得意だから油断出来ないわね」
「どぅれ、そうゆう事なら、タッカーは可愛そうだが、もうそろそろ動くとするか?」
タフタも言って、起き上がった。
ウェンウェイも顔を上げて、
「まず、荷を軽くするかな」




