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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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虹カマス

虹カマスの湖に流れ込む川の流域にチェコたちは、虹カマスに引かれて入っていく。


周囲は巨大な丸い岩石がゴロゴロと積みあがった河原だったが、やがて大きな滝の淵に出た。


チェコはタイミングよく浮遊のスペルを解除しながら釣竿を操って、滝の岸に上手く着地した。


高さが三十メートルほどの太い滝が、轟音を響かせて一直線に滝つぼに落ち込む、百メートル直系ほどの丸い淵だ。

滝の向こう岸は、ずっと滝から続く断崖のようで、チェコの背後には急傾斜な森が人の侵入を拒んでいるようだった。


チェコは、竿を垂直に立てて、虹カマスを釣り上げようとする。


ぐぬぬっ!


唸りながら、じりじり、後退り、糸を引いていく。


突然、水の中から、体長一メートル以上はありそうな巨大な魚が、空に向かって飛び跳ねた。


緑のメタリックな全身の中央に、赤の筋が頭から尾にかけて走り、胸鰭のあたりに黄色い斑点があるため、なるほど虹色と言えなくもない綺麗なカワカマスだ。


魚は、空中で大きく体をのけぞらせ、鋭角に水の中に潜り込む。


うわぁ、とチェコは魚に引っ張られた。


チェコは滝の水際まで引きずられたが、パトスがチェコのブーツを齧って必死に抑えた。


「キャサリーンも手伝って!」


えええっ、と狼狽えながらも、キャサリーンはチェコの胴を抱えた。


なおも引きつ引かれつの力勝負が続けられたが…。


「ぬぅー、だいぶ弱って来たぞ!

もう少し…」


チェコは、歯を剥きだして、竿を引いた。


徐々にチェコは陸側に歩き、一気に、ぐんっ、と魚を引いた。


水辺が波立ち、一メートル二十はある巨大な魚が、岸でバチンと飛び跳ねた。


誰も近づけないほどの勢いでカワカマスは跳ねまわっていたが、チェコはポケットから折り畳みナイフを取り出すとカマスの後頭部に突き刺した。


血が、ドボドボ流れて、魚は急激に力を失った。



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