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スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
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不老不死

「外道?」


なにやら禍々しい言葉の響きに、チェコも思わず顔を上げた。


「不老不死になると言われている方法は幾つかあるけど、信憑性は低いわ。

ある種の人魚の肉、とか秘境にあるという不老不死の木の実とか、ヌーボーの心臓とか。

特別な配合の薬でそうなる、という話もあるし、悪魔と契約を交わす、という話もある。

でも確実に不老不死となるのは、おそらくこれだけ。

天使を殺し、その肝を食べるのよ。

そうすれば強烈な神の呪いがかかり、冥府の扉は永遠に閉ざされる。

結果、不死となり、また天使の魔力で強力な回復能力を得るため若さは失われることがない。

プルートゥは、場合によっては、少年と見られるほどに若返ることもあったわ」


ひぇー、とチェコは驚き、


「まるで片牙みたいだね!」


いや、とヒヨウは、


「片牙は、生ける屍のようなものだ。

冥府から拒絶されているのは同じだが若返ったりしない。

少しづつ鬼になっていく途中の者を、半分鬼、という意味で片牙と言ってるのだ」


え、とチェコは惑った。


「だって鬼は冥府の番人じゃないの?」


「見た目を含めて、とても良く似ているので、我々人間の目では見分けがつかないから同じ言葉で呼ばれるのだが、鬼は三種類あるんだ。

冥府の番人は、無論恐ろしいが善鬼。

冥府から追放された魂は、徐々に鬼化が進んでいき、誰彼構わず人を襲い殺す悪鬼と呼ばれ、片牙がこれだ。

また別に、人を喰らうことを好む食人鬼の集団があり、これを野鬼という。

これは人が共食いをした結果なるとも、生まれながらに鬼の血がある人間とも言われ、どうして鬼になるのかは不明だ。

これらは見た目はとても似ているが本質が違う。

つまり善鬼は見えいても霊的なものなのに対して、悪鬼は動いているが屍、野鬼は生物であり生き物なのだ。

つまり野鬼は殺す事ができるが、善鬼と悪鬼は殺せないのだ」


あ、とチェコは気がつく。


「片牙は殺せないのか!」


「そうだ。

だからこそ、皆、片牙を恐れている」


「見つかったなら、片牙に殺される前に死ね、って聞いたよ…」


ヒヨウは頷き、


「奴は人を殺し、その魂を喰らう。

奴に喰われた魂は消滅してしまう。

冥府に帰れないのだ。

これは、本当の魂の死、を意味している。

完全にこの世から消える、という事なのだ」


死者の祭りにも帰れなくなるのか…、とチェコは呟いた。


「怖いわねぇ…」


ミカは囁いた。

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