水と光
「第一講座?」
チェコは目を丸くした。
ダリアの手伝いはいくらもしたが、講座なんてされたことはなかった。
「あのなぁ。
静寂の石っていうのは普通、スペルランカーなんつー軽薄な遊びに使うもんじゃないんだ。
錬金術師が、師から弟子に授ける魔法なんだぞ」
「俺、爺さんの弟子になっちゃったの!」
だから…、とダリア爺さんは片手で頭を抱えて、
「ちゃんと授けた訳じゃないのに、お前が使っちまうから、こーゆー事になるんだろうが。
良いから聞け。
静寂の石とは、単にアースを止める石じゃない。
微妙なアースのコントロールを操る石なんだ、判るか?」
「ちっとも」
ダリアは、うーん、と唸り、
「つまりだ。
上を見ろ」
と空をさす。
「あの空というのは、お前の大好きなスペルカードで言うと、何の属性になる?」
「うーん、光、かな?」
「そうだ。
だが、お前が使った飛行のスペルは水の属性だな、何でだ?」
え、とチェコは、まるでウサギに噛みつかれたような顔をして、
「だって…ほら、水の属性は魚の他に鳥とかもいるし、その流れ、で?」
「あのなぁ、流れ、なんて曖昧なもんは錬金の科学の世界に存在しない。
つまり、水、の中にも光も含まれているから、だ、判るか?」
「え、でも水は光らないよ?」
はぁ、とダリアは溜め息をつき、
「川に潜れば、水の中に光りが入ってくるだろう。
と、同時に。
魚も息を吸っている。
これも光の一部だ、判るか?」
「えー、魚は空気の中に出したら死んじゃうよ!」
「肺ではなく、エラで呼吸をしているだけで、同じ酸素を魚だって必要としているんだ。
では別の話だ。
下を見ろ」
とダリアは黒龍山を指さした。




