再生
ゴロタがやられた!
チェコは愕然と、信じられない光景を見下ろしていた。
これでは、ミカを助けられないどころか、妖精ハナまでプルートゥに強奪されてしまう…。
どうしたらいい…。
チェコは混乱した頭で必死に考えた。
ま、まず…。
チェコは思い返す。
ゴロタには再生能力がある!
と、気がついた。
今も、ゴロタは横たわりながらも、白い糸を出して体の再生を図っている。
少しでも、ほんのちょっとでも時間さえ稼げれば、きっとゴロタは立ち直る…。
「チェコ!」
ヒヨウが叫んだ。
瞬間、チェコは気がつき、体を屈めた。
チェコの首を切断するように、プルートゥの剣が真横に走り抜けた。
チェコは叫んでいた。
「スペル、引き潮!」
プルートゥが目を丸くした。
「小僧、そんなモンまで、どこで集めた!」
問いながらも、プルートゥは落下していく。
スペル飛行が途切れたのだ。
引き潮は、その場にある全てのアースを、現在、続行中のスペルのアースまで含めて、全て術者に集める瞬間魔法で、デュエル用というよりは戦争で効果を発揮する、フィールド全体に影響するスペルだった。
「ダリア爺さんがいらない、って言うから、俺が貰ったのさ」
言ってチェコは叫んでいた。
「静寂の石、発動!
俺が集めたアースは大喰らいの壺に入れて…と」
チェコは、ニィ、と笑った。
「さあ、プルートゥ。
俺と戦え!」
プルートゥは、百メートル近い高さから、黒龍山山頂の岩石に突き刺さった。
一瞬で水を満載した皮袋が潰れたように、赤い染みが岩肌に広がった、が…。
まさか…、とチェコはそれを見つめていた。
プルートゥが、よろり、とボロボロの肉塊の姿のまま、立ち上がっていた。
プルートゥの周囲に、赤い霧が集まってくる。
どうも、体に血液が帰ってきているようだ…。
「あんた、いったい…」
ゾッとして、チェコは囁く。
プルートゥは、顎が真っ二つに折れたままの顔で、クククと笑った。
「再生するのは、ゴロタだけじゃねぇ、って事さ…」
チェコの体に、冷たい汗が流れていた。




