大いなる幻想
光りの柱に体を貫かれたまま、プルートゥがククク、と笑った。
「獣なんてのは、どんなに強くても獣なんだよ。
ドラゴンでも熊でも同じなのさ…」
光のバリアーの中、ゴロタの巨大な胴体に、深々と巨大なダークミスリルの剣が、改めて突き立てられていた。
どろ、とゴロタの腹から、真っ赤な血液が流れていく。
「で…、でもゴロタは再生できるよね?」
チェコはゴロタを見ながら叫んでいた。
ヒヨウは唸る。
「再生は出来るが、あの剣が有る限り、何度再生しても意味が無い…」
「え…、でもハンザキと同じだって…」
ヒヨウは溜め息をついた。
「半分に裂けても再生する、というのは、さすがにハンザキという生物独特な能力なんだ。
さすがにゴロタは傷を治す、までしか無理だ」
ぐ…。
チェコは唇を噛んだ。
ゴロタが勝たないと、ミカさんを助けられない!
チェコはキャサリーンに耳打ちした。
「キャサリーン姉ちゃん、このカードなんだけと…」
キャサリーンはチェコがスペルボックスから取り出したカードを見て、
「あ~、そうね、確かにそんな風にも使えるわね。
ただ、範囲の指定の事までは判らないけど…」
「そっか!」
チェコは、走り出していた。
「おい、チェコ!」
タッカーが、弱った体で、チェコを背後から引き留めようと手を伸ばしたが、チェコは叫んだ。
「スペル飛行!」
タッカーの指先をすり抜け、チェコはネルロプァの階段から、何も遮るものの無い広い青空に飛び出していた。
「無理かな、
戻るかな、チェコ!」
ウェンウェイがチェコの背中に叫んでいた。
巨大な、白い輝きに向かって、チェコは真っ直ぐ飛び込んで行く。
プルートゥの体を貫いた光の柱がチェコにも迫ってくる。
「スペル、大いなる幻想!」
瞬間、チェコは別空間に入り、一瞬の後、元の空間に戻った。
チェコは光の壁を抜け、ゴロタに向かって落下して行く。
「召喚、ハンザキ!」
空中でスペルを唱えながら、チェコは叫んでいた。
「もう起きろよ、馬鹿エクメル!
今、お前が起きなければ、俺は死ぬんだからな!」




