駆引き
チェコたちは必死に階段を登っていた。
もし殺法が発動されたら、ゴロタとプルートゥの間にいる自分たちの命はない。
「プルートゥの奴、動かないね?」
出来ることなら、もっとゴロタに接近して欲しいところだ…。
「バリアーを警戒しているんだろう。
あれは、迂闊に近づくとヤバい」
チェコの問いにヒヨウが答えた。
「バリアーがヤバい?」
「ダークミスリルを砕くほどの破壊力を持ったバリアーだぜ。
うっかり近くで食らったら、どうなると思うよ」
タフタが語った。
「バリアーも攻撃に使えるのか!」
バリアーは身を守るもの、とチェコは思っていた。
「剣で防ぐ事も出来るし、盾で殴ることも出来るかな。
頭を柔らかくする事かな」
ウェンウェイも言う。
確かに…。
どんなものにも、様々な使い方はあるのだ。
デュエルだって、防御的な攻撃スペルの使い方もある。
自分の重要な召喚獣を守るため、敵の召喚獣を潰す、とかだ。
色々、俺はもっと戦いを見て、知らなきゃ、駄目だ。
チェコは思った。
「だけど死の雲、なかなか出さないね…」
チェコは息を荒げながら言った。
物を食べてしまったせいか、前より苦しくなってしまった。
「死の雲は、あの高度まで届かせるには時間がかかる。
うっかり雲を出したままバリアーを張るわけにもいかない。
今、無言の駆引きが行われているんだ」
ヒヨウは語った。
「でも何もしないんじゃあ、プルートゥを休ませるだけじゃない?」
ヒヨウが空を見上げた。
「そうなんだが、やはりミカが邪魔なんだ」
「ミカさん、死の雲まで吸い込めるの!」
「可能だ。
だが、ミカは只では済むまい。
死霊を吸っただけでも、あれだけ消耗しているんだ。
死の雲じゃ、命が危ない」
チェコは息を飲んだ。




