殺法
全ての死霊を吸い込み尽くすと、ミカは、ふら、と倒れる。
プルートゥは、それを抱き、またマントの中に引っ込めた。
「あいつ…、ミカさんに何をしたんだ!」
チェコは、自分でもよく判らない、焦燥にも似た怒りを感じていた。
「あの娘は、プルートゥは手放さないでしょうねぇ」
キャサリーンは、おっとりと言った。
「プルートゥの強さの一部分とも言えるものねぇ」
赤い髪を掻き上げる。
空中にプルートゥ、地にはゴロタが向かい合っていた。
お互い、相手の出方を窺っている様子だ。
「死霊を祓っちまったのは確かに凄げぇが、しかしゴロタにあのバリアが有る限り、プルートゥが何をやろうが手を触れる事すら出来んぜ」
タフタは呟く。
「しかしゴロタも、あの距離のプルートゥに攻撃を当てられない。
お互い手詰まりなのかな?」
タッカーも呟く。
「どうかな。
精獣であるゴロタには神が宿っている。呪法も、死霊を呼び出すだけではない」
「そうなんだ?」
チェコは驚く。
「呪法、殺法、滅法、と強くなっていくんだ」
ヒヨウは解説をした。
「じゃあ次は殺法?」
「そうだ。
だが、それは一番、俺たちに危険な技になる。
やはり急ぐぞ」
ヒヨウは再び、足を早めた。
チェコも追いかけながら、
「また死霊が出てくるの?」
だから危険なのかと思い、聞いた。
「いや、殺法は、死の雲という。
その黒い雲にまかれたものは、雲に触れただけで傷を負う。
つまり、俺たちが一番、危ないんだ」
全員、無言のまま、足を早めていた。




