切り身
チェコもリュックを下ろした。
何日前なのか、寝たり、寝なかったりが続いているので、はっきり思い出せないが、虹カマスの湖で作ったおじやが少し残っていた。
パトスには蛇の干物を分けた。
虹カマスの切り身もだいぶ残っている。
「うーん、この干物は、出来れば焼いて食べたいんだよなぁ…」
リュックにぶら下がった干物を見ながらチェコは言う。
「ああ。
あの時の大きな魚ねぇ」
キャサリーンは思い出した。
「なんの魚だ?」
とタフタ。
切り身なので、見ただけでは、さすがに判らない。
「虹カマスだよ。
こんなに大きいの!」
チェコは両手を目一杯に広げた。
「へー、虹カマスの大物は精がつく、と言われてるから、タッカー、一切れ貰っちゃどうだ?」
チェコは山ほどある切り身の一つをタッカーに渡した。
が、タッカーは、
「え、これ、生で齧るの?」
と、戸惑う。
「本当は、ちょっと炙ると油が焦げて、本当に美味しいんだ。
でも、そのままでも旨いよ」
と、チェコも我慢出来なくなり、一口齧った。
「こうして…」
もぐもぐと噛み続ける。
「噛んでいくと旨味が広がって…」
皆に切り身を分け、噛み続ける。
どっしりした味が、滲み出てくる。
「うん、旨い!」
チェコが満足げに頷くと、ウェンウェイがチーズを分けてくれた。
食べたい食べたいと思っていたが、今まで機会が訪れなかった奴だ。
はむっ、
と噛むと、中は意外に柔らかい。
そう言うと、ウェンウェイは笑い、
「市場に出るのは、大量に作って日持ちするように寝かせた奴かな。
俺のチーズは食べる分、食べる時に作るから、そうなるかな。
それでも二ヶ月程は寝かせているかな」




