合体
全員が驚いて空を見上げた。
プルートゥは、今、剣を構えたまま、空中に静止している。
向き合っているのは、プルートゥの二倍ほどの体を持つ死霊だった。
その死霊がプルートゥを足止めしている間に、他の死霊たちも次々と合体していく。
合体…。
それは、なんとも不思議な現象だった。
二体の死霊が、まるでもつれた糸がほぐれるかのように像をぼやかせ、やがて一本の糸の束のようになり、それが二つ、絡み合うように、一回り大きな死霊になる。
また、その死霊が別の束と集まり、更に一回り大きくなっていく。
「大きくなると、強くなるのかな?」
チェコの問いに、ウェンウェイが、
「普通に、体が大きければ大きいだけ、力は強くなるものかな。
その分動きも大きくなり、小回りは効かないかもしれないが、それは、この数的な優位があれば、あまり問題にならないはずかな」
「でも、その相手はゴロタと素手で殴り合ったプルートゥだよ?」
「一対一と、一対多では、話が違うかな」
「とにかく今は急いで上に向かってくれ。
戦いは益々激しくなっているんだ」
ヒヨウは急かす。
タッカーは、キャサリーンの助けもあり、今のところは思うよりスラスラと歩いていた。
「そういえば、僕の住んでいた地区で、足が悪くなったお爺さんがいたんだ。
でも、その人は腕の良い皮加工の職人だったから、ある金持ちが腕を惜しんでエルフタッチをさせたんだ。
一週間で立てるようになり、前より若々しくなって、なんと髪まで生えて来ちゃったんだよ」
「髪はよく判らないが、エルフタッチは体内を活性化するので、そういう事もあるかもしれないな。
逆に腹は空くはずだ」
「あ、確かに…」
とタッカーは、お腹を押さえた。
鍾乳洞の近くで休んだとき以来、何も口にしていない。
「皆、あの太い枝まで行けば水や食糧はある。
今、持っている食べ物は歩きながら、食べてしまって構わない」
ヒヨウが言うとタフタは、
「へぇ、そんなの知らなかったな」
ヒヨウは笑い、
「あんたたちだって、あちこち、隠し山小屋を作っているだろう。
皆、同じだよ」




