ミツバチの茂み
「何これ。
全部、ミツバチの巣ってわけなのぅ?」
キャサリーンは、驚いて呟く。
ミツバチの茂みの内部は、凄い量のミツバチが飛び回り、頭上には、まるで満開の花が咲いたように金色のミツバチが枝葉に停まっていた。
周囲には、蜂蜜の甘い匂いが漂っている。
「この辺の木のウロは、全部ミツバチの巣なんだよ」
「不思議ねぇ、こんなに集まったら、ミツバチを捕食しようとする敵の格好の的じゃないのかしら?」
アハハ、とチェコは笑い。
「ここには、とっても強い用心棒がいるから大丈夫だよ、ほら」
指を差すと、そこには大きなクマが、のしのし、と歩いていた。
「ちょ…、ちょっとクマじゃないのよ!」
「平気平気。
彼はハニーベアだから」
「ハニーベア?」
「ミツバチしか食べないクマなんだ。
だから、ここの蜂を苛めない限り、人間には興味を示さないんだ」
「えっ…本当なの…」
ハニーベアは、あちこち、鼻を突っ込みながらもキャサリーンの方に近づいてくる。
「ほら、平気だよ」
チェコは、わざとクマに近づき、背中を擦るが、クマは完全無視で歩いていく。
「だから、ここを抜けて虹カマスの湖に出れば、俺たちも安全って訳さ」
キャサリーンは、ビクビクするが、一方のハニーベアは何の関心も示さず、歩み去る。
「ただし、ハニーベアは、蜂の嫌う臭いには敏感だから、気をつけてね」
「え、蜂が嫌う? 何かしら?」
「灰の臭いと、ハッカの匂いさ」




