集まり
タッカーは、すぐに歩けるような状態ではなかった。
「…ごめん…」
呟くように言うが、ヒヨウは、
「いや、ここまで上がれただけでも大分ましだ。
地表に近いところは、もはや命あるもののいる場所ではない」
チェコが下を覗くと、確かにネルロプァの根の上は、ビッシリ死霊で埋まっていた。
とはいえ、なぁ、とタフタは胡座をかいたまま、
「出来りゃあ、プルートゥより高くまで行きたかったな。
これからも無限に死霊は増え続けるんだからな」
まぁ、だけど…、とキャサリーン。
「狙いの主が、あそこで頑張っている間は、こっちは安全じゃないかしら」
あ!
と、チェコが叫ぶ。
「もしかしたら、俺たちを死霊に殺させてから、プルートゥはハナを奪う気じゃ無いかな?」
ひっ、と身動きとれないタッカーが叫ぶが、キャサリーンは笑った。
「それで良いなら、最初に会ったときに、奴はあたしを殺してるわよぅ。
傭兵っていうのは、徹底的にリアリストなのよ。
もし、あたしか死んだら、ハナは自然に帰る。
そして、一度帰った妖精を、再度捕まえるなんて不可能なのよ。
だからプルートゥは、脅したり、すかしたりして、譲渡を迫っているのよぅ」
確かに妖精を持っていない夜の森で、プルートゥがチェコにしたことは、ミカを取り返し、チェコは殴って気絶させただけだった。
無論、もしちさがいなければ全滅していたかもしれない状況だったが、そこまで敵であるプルートゥが配慮する理由は無い。
タッカーもミカも、チェコとデュエル、つまり互いに傷つかない競技決闘をしただけで、かすり傷一つつける気も無さそうだった。
「でも、さっきは皆殺し、って言ってなかった?」
チェコが問うと、キャハハとキャサリーンは笑い。
「つまり、ルールを知っているのがあたし一人と見越して、他の人間向けに、わざと言ったわけよ。
自分も殺されるなら話が違う、って揉めて欲しかったわけ」
「まぁ、俺とか、特に、あんたたちと利害関係は無いかな。
俺が取り乱せば、と目論んだかな?」
ウェンウェイが言うと、ヒヨウも、
「俺のようなエルフが人間と一緒なのも珍しいしな。
ただの小遣い稼ぎのガイドなら、逃げ出してもおかしくない」
あっさりと言った。
「変なところで、変な人間ばっかり集まったもんだな」
ハハハ、とタフタは笑った。




