巨大化
魔獣ヒドラと化したプルートゥが、ゴロタの顔面にパンチを打った。
が、真っ正面からパンチを放った瞬間のプルートゥは無防備だった。
そこに、左右から、プラズム体の二匹の蛇がマグマ弾を撃ったのだ。
凄まじい大爆発がまき起こった。
チェコたちは階段の途中で足を止め、エルフの職人技の光る、飾りは無いが手触りの良い、頑丈な手摺を握り締めた。
ゴロタが、ずん、と前足を折った。
「あっ!」
チェコは叫んだ。
立ち込めた白煙の中から、プルートゥの姿が現れた。
「巨大になって…やがる…?」
タフタは呻いた。
プルートゥは今や、ゴロタの足と変わらぬ程の胴回りを持つ、巨大なヒドラに育っていた。
「忘れていたわ。
ヒドラは、火を喰らうんだったわね…」
キャサリーンは呟いた。
「火を喰らってデカくなった、って言うのかよ!
何でもアリ過ぎるだろ!」
タフタは唾を飛ばして怒鳴った。
「奴はプロよ。チェスをするように、理詰めで戦えるのよ。
その知能の点では、今のところゴロタより完全に上を行っているようね」
巨大になったヒドラは、ゴロタの頭を両手で掴み、押さえつけようとしていた。
「あ…、あいつ、もしやゴロタの口をこじ開けようとしているんじゃあ…」
チェコが叫んだ。
「どちらにせよ、スペルなどでゴロタは倒せない」
ヒヨウが反論する。
「爆発系のスペルではそうだったけど、他のスペルは判らないよ。
例えば動きを遅くする、とか、嫌なスペルは幾らでもあるからね」
タッカーが、いつになく冷静に言う。
あ、とチェコは嫌なことを思いついた。
「動物森の動物みたいに、草の毒とかだったら…」
ヒヨウは唸った。




