表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
34/688

ミカの帽子

もくもくと立ち昇る黒煙の中でも、プルートゥは軍帽の一ミリも乱してはいない。

ただ、黒いマントで全身を包んでいた。


「OK…。


ここでアースを使っちゃいけないらしいな…。

判ったか、タッカーボーイ?」


タッカーはよろよろと立ち上がる。


自慢のコートは黒焦げで、埃を叩こうと手を触れた途端、粉末化して飛び散っていった。


コートの下には、スパッツと、同じ素材のピッチピチのTシャツで、タッカーは、ひぃ…、と両手で、それを隠そうとする。


「タッカーちゃん。

ちょっと、その服、趣味、悪いわよ」


と、プルートゥと同様、汚れ一つない包帯少女は、笑いを含んで、小言を言った。


「ち…、違いますよ!

これは僕のアンダーウェアなんです!


身体機能を優先したウェアなんですぅ!」


包帯少女は、口を押えて、囁く。


「コートの下にアンダーウェア?


ター君ったら、意外とナルシー?」


タッカーは顔を赤くして。


「違うったら! 違うったら!


なによ、ミカちゃんだって、その帽子とか、かなり浮いて…る…」


言いながらも、タッカーは、しまった…、という顔をした。


ミカの奥で、プルートゥも、バカッ、と声には出さずに口を動かした。


「…え…」


ミカと呼ばれた少女の、唯一露出した大きな金色の瞳が、凍り付いた。


「う…浮いて…る…?」


瞳が、みるみる涙で濡れ始める。


「あー違うの、違うの、ミカちゃん。


僕ってほら、童貞じゃん?

女の子と話したことなくって、男友達に言うみたいに、つい言っちゃったんだけど…」


タッカーは目まぐるしく頭を回転させて、


「その。


最近のコクライノの下町言葉ではさ、浮いてる、って言ったら、もう最高にイカす、ってことなんだよ!

判るでしょ?


僕、ダウンタウンキッドだから、ハハハ。


タッカー、お前のそのコート、最高に浮いてるぜ!

とか、言われたもんよぅ、アハハハハハ」


「イカす??」


「似合ってる、っていうか。

それ以上、みたいな!」


タッカーは必死に笑った。


それにつられたか、ミカは、ニッコリと笑った。


「そうだったんだ!」


両手で大きな帽子の、長い鍔を持ち、ミカはクルリと回った。


「この帽子はね、私の師匠から貰ったの。

それで、師匠はね、師匠の師匠から貰ったんだよ!」


アハハハ、タッカーは笑いながら、カバンを開き、替えのコートを取り出すと、必死に笑いながら、アンダーウェアの上に羽織った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ