入れ墨
「理解しないなら、それでもいい。
だがエルフの入れ墨は太古より伝わるれっきとした魔法なんだ」
とヒヨウは肩を竦めるが、チェコは飛びついた。
「それ、俺にも出来る?」
ヒヨウは、いきなり言われて考え込んだ。
「呪術的入れ墨トーガは、まず、その人物の守護精霊が何なのか、それを割り出さなければならない。
お前の生年月日は何年の何月何日なんだ?」
不意に、チェコは顔を曇らせる。
「え…、俺、自分がいつ生まれたか、なんて…」
「ユリプス帝歴十三年の六月十二日生まれかな」
ウェンウェイが、呟くように言った。
「え、そうなの?」
チェコは驚き、叫んだ。
「あの頃は御父上も母君も幸せに包まれていたかな…。
お前はユリ…、お祖父さまの黄金のぎょ…、椅子の上で、おしっこを漏らしたかな」
おお、とチェコは、感動に目を潤ませた。
「お…、俺の誕生日…」
生まれて十三年、チェコは初めて、生まれた日を知った。
「ユリプス帝十三年って事は、公歴百二一年ね」
キャサリーンは教えた。
「百二一…、六…、十二…」
とヒヨウは計算し、
「お前の守護神はカーマ、森の神にして武神だ」
と導き出した。
「それなら十三歳で守護聖獣を選ぶ儀式を行い、まず右手に聖獣の紋章を入れる。
それから十五、十七、十九と入れ墨をして、二一で顔に戦士の紋を入れる。
それより上は、エルフ以外では意味はない。
部族内の地位を示すものだからだ。
だが入れ墨が完成すれば、心も体も武神カーマに守られることになる」
おお! とチェコは喜ぶが、
ごぅ、
と大樹ネルロプァが揺れるほどの爆発が起こった。




