呪い
「人間じゃない、って事?」
チェコは不意に気になり、聞いた。
「あの手の人間はね、チェコ君。
体にアイテムを埋め込んだり、内臓を改造したり、勝つためならありとあらゆる事をするのよ。
普通に考えて、召喚獣に自分がなるなんて、いくら魔法とはいえ不可能なのよ。
ただし、人をモンスターにするスペルはある。
一つ問題があるとすれば、モンスターになった人間は、もう元には戻らない、という事なわけよ」
「元に戻らないの!」
チェコは息を飲んだ。
「この手のスペルは、カードにして、その時だけ手軽に使う、というような簡単なものではなくて、もっと古い、呪い、のようなものなの。
ゾンビとかミイラとか、今でも古い魔法遺跡なんかには厄介な奴がいるけど、あれなんかが古い呪いによって二度と戻らなくなった人間の成れの果てなのよ」
チェコは愕然とした。
「じゃあ、いつかプルートゥも?」
「あの男は、自分の未来の姿なんて気にもしていないんでしょう。
今、大金を稼げればそれでいいのよ」
未来にはゾンビやミイラになると判っていて、それでも自分に呪いをかけるのか?
チェコには、それがどういう心の動きなのか、全く理解出来なかった。
「たまにあるな。
ほれ、有名なレスリングの選手だったのが、肉体強化のスペルを使っていて、今じゃ一日中ベッドの上、とか言ってたな」
タフタの言葉に、タッカーが、ああ、と答える。
「マシンガン.ジョーでしょう?
手の尽くしようがない、って話だよね」
ヒヨウは、すっ、と腕を捲って見せる。
緑の、非常に図案化された木の葉の刺青があった。
「これはエルフの魔法だ。
体を強くする。
こういうものなら、安全に体と心を強化できる」
キャサリーンは苦笑し、
「おまじないと魔法は、ちょっと違うんだけど、まぁ安全は、その通りね」




