戦い
チェコが今まで見てきたのは、主に自然界に普通に生きる生物や、せいぜい黒龍山のお化け、山女や山人などだ。
本物の怪物、など召喚カードで見たことしかなかった。
例えば天翔ける狼。
これは、なんと空を走る狼で、ハンザキを一蹴できるほどに強い。
また、ヒドラ。
これはトカゲ人間の旅団で見た中でも、とびっきりの怪物だった。
夜の旅団の揺らめく火の中で見たヒドラは、カードの半分のスペースに、簡素な絵が描かれていたが。
なんと、火の玉として打ち出し、その先で地面や壁、木の幹などに貼り付き、そこに根を張って、射程五で襲ってくるという、とんでもない怪物だった。
あのプルートゥは…、ヒドラをもっているのだろうか…?
ふと、そんな事も気になってしまう。
「どうなるのかなぁ…」
チェコの隣に、いつの間にかタッカーが立っていて、問いかけてきた。
「プルートゥは高速移動を使って、ゴロタの蛇を避けているけど、逃げてるだけじゃ、戦いにならないよ…」
チェコは言った。
「いくら大量のスペルカードを持っていても、いつか尽きる。
そしたら、後はゴロタのターンだよ」
チェコの言葉が終わらないうちに…。
プルートゥは、高速移動から、見たところ、普通に足蹴りをゴロタの前足に放った。
体長十五メートルのゴロタの足は、直径でも数メートルはありそうだ。
足の直径が、すでにプルートゥの背よりも大きいのだ。
それが。
一蹴りで、ガクン、とゴロタは前足を折り、バランスを崩した。
チェコとタッカーは、デュエルの試合でも観戦しているように、おお、と声を上げた。
「パワー強化のスペルだろうけど、あの怪物を一蹴りで倒すなんて!」
タッカーも興奮して叫んだ。
「おい、そこじゃ危ない。
ネルロプァに登るから、こっちへ来い」
ヒヨウは、二人を呆れたように腰に手を回して、見、言った。




