表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
326/688

来た

皆、必死だった。


タッカーも、もう口を開かない。

とにかく世界樹ネルロプァに辿り着かないと、すぐにゴロタとプルートゥの戦いが始まってしまう。

それは、今まで考えていたよりも、ずっと激しい戦いになりそうだ、とは全員が判っていた。


壁のような根に、なんとかよじ登り、二股の根を跳んで渡り、ふと見上げると、ネルロプァの幹が、だいぶハッキリと見えるようになってきていた。


それは尾根とほぼ同等の大きさを持つ、巨大な木の切り株のようだった。

首塚のように見えていたのは、どうやら無数の、切れた幹であるようだ。

空に伸びていく一本の他に、二、三十本の、途中で切れた幹が、まるで塔のように、また墓標のように、黒々と空の青に向かって、むなしく伸びていたのだ。


いや、切り株自体が、無数の幹の集合体の様にも見えていた。


「あれ…、折れちゃったの?」


チェコは思わず聞いた。


「そうだ。

実は、四里の吊り橋は、人工的に俺たちエルフが作ったものなのだ。

これは、地上の人間が思うよりもずっと、重要な事であり、今の、この幹も、折れれば又、新しい幹を引いてくる事になる。

ゴロタはそんな事、気にも留めないだろうからな」


ヒヨウは足を止めてチェコに話し、全員が同じ根に集まると、


「ここから先は、根の上を走る。

本来は責められるべき行為だが、今はもう…」


その時、山が震えた。


雷鳴よりもなお激しく、それは山そのものが吠えているような、地面から伝わるとどろきだった。


「来たか…」


ヒヨウが呟く。


「来たのか?」


タフタもまた、少し青ざめていた。


「根の上を走るぞ。

ここにいては、巻き添えを食ってしまう!」


ヒヨウは叫び、走り出した。


チェコ以外の人間は、まだロープで繋がれたままだ。

半ば引きずられるように、全員はネルロプァの入り組んだ根の上を走った。


どう…。


背後で、巨大な音がしていたが、それがゴロタの足音なのか、プルートゥのスペルなのか、誰も見返すことは出来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ