表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー  作者: 六青ゆーせー
319/688

四里の吊り橋

尾根道は、山頂から緩やかに下って行き、その遥か四里の先には、赤竜山も、深い青い影として望洋と見えていた。


その手前、尾根の先には得体の知れない、どす黒い物体があるのがチェコにも見えてきた。


「ん、何かな…、また首塚?」


「いや、チェコ、あれが俺たちが目指していた四里の吊り橋だ」


「ええっ。

あれが?」


チェコが言うのも無理は無かった。

それは、およそ吊り橋らしい形態を持っていなかった。


黒龍山の岩骨にガッチリと喰らいついた野太い根が、幾重にも山脈の尾根に走り、食い込んでいる。

幹は捻くれ、大きく捩れながら、真っ黒な樹体は遥か上空へ消えて行っている。


「そ…、空に消えてるよ…」


「チェコ、あれは世界に六本あると言う世界樹の一つ、ネルロファ、四里の吊り橋の本当の名前だ」


「世界樹!」


それは、神の国にまで届くという神秘の大樹だった。


「えっ、でも真っ黒だよ。

枯れてるんじゃ…」


世界を支える神聖な木が枯れる訳は無かった。


「近くで見れば判る。

あれで枯れてはいないのだ。

これから俺たちは、世界樹に登る事になる」


ええっ! とチェコの後方で、タッカーが喚いた。


「ま、まだ登るの!」


昨日の段階で足をつっていたタッカーには、確かに酷だった。


「まぁまぁ、歩けなけりゃあ、俺がおぶってやるかな」


ウェンウェイの言葉に、全員が笑ったとき。


どぅ、と尾根が揺らいだ。


皆が一斉に振り返ると、黒龍山の頂上に、プルートゥが立っていた。額や手足に鮮血がこびりついているが、どうも自分の血では無いらしい。


「いょう、待たせたな」


とプルートゥは、白い歯を光らせ、笑った。


ヒヨウは歩き続けていく。


「気に止めるな。

奴の相手は俺たちじゃない」


へ? と驚くチェコのすぐ脇から、ごろごろと不機嫌そうに喉を鳴らした黒豹の群れが、プルートゥに向かっていた。

黒豹に続き、ジャガーや、山猫までが尾根の左右から次々と登り、尾根を埋めつくしてしまった。


ハハ、とプルートゥは爽やかに笑う。


「まだ遊んでくれるのかい?

嬉しいねぇ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ