山頂
黒龍山の頂きは、とてつもなく巨大な岩たった。
板岩から見るとなだらかに見えたが、いざ登ろうと思うと、岸壁に近い傾斜だ。
だが遠くからは見えなかった白い登坂道が、小動物専用の道のように、細く作られていて、なんとか片足づつ道に乗せるように、岩の周囲を回って行く。
頂上の裏側に入ると、大きなドーム形に見えた山頂は、横に長々と尾根が伸びている事が判った。
そこから道は蛇行して、やがて今までとは逆回りに山を上がった。
足場がとにかく細いので、チェコも回りを見る余裕は無かった。
と、前を歩くヒヨウが、薄く笑いながら振り返る。
「ここが黒龍山の頂上だ」
え、と見ると、それは村の広場ほどの、ほぼ平地に近い岩の上だった。
「つ…、着いたぁ…」
タッカーが、へたへたと腰が砕けるように座り込んだ。
「おいおい…」
とタフタが声をかけようとした時。
ずがーん!
神鳴りを数十倍にしたような轟音が、山々に響き渡った。
「うわぁぁ…」
チェコは叫んだ。
山頂と首塚を結んでいた板岩が、物凄い白煙と共に崩れ落ちていった。
「こりゃあ、道がメチャクチャになっちまうなぁ…」
タフタが、放心したように呟く。
だが…。
その白煙の中を、黒々とした人影が、飛んできていた。
「あ…。
あれは、まさか!」
チェコが、驚いて飛び上がった。
「プルートゥ…。
あのぐらいじゃあ、さすがに参らないみたいねぇ…」
キャサリーンは、どこか淡々と語った。
「よし、先を急ごう」
ヒヨウの言葉に、タッカーは両肩をタフタとウェンウェイに強引に持ち上げられ、一行は山頂から緩やかに下る尾根を歩き出した。




