飛行
「ダメージ転移…」
チェコは、岩が己の肉体的を切り裂く瞬間、叫んでいた。
が、激痛がチェコを襲った。
気が遠くなりながらも、
あ、やっぱ、駄目だったかも…。
思う最中に、チェコの背骨が、岩に当たって、バキリと折れた。
うわぁ…俺、これで死ぬのか…。
もっと死ぬ、というのは大変な事のような気がしていたが、なんの事はない、木から落ちて足を折るように、人間は、ほんのちょっとの事で死んでしまうのだ。
そんな事も俺、知らなかったんだな…。
うっすらと、そう考えながら、チェコの気は遠くなっていったのだが…。
チェコ…、気を確かに持て!
パトスの声が聞こえた、と思ったら、ビュウ、と頬を風が殴り付けた。
あっ!
チェコは目を開いた。
チェコは、ぶつかったはずの岩塔の上に踞っていた。
まだ死んではいなかった。
チェコは、立ち上がりながら、叫んだ。
「飛行!」
突風がチェコを巻き上げ、そのままチェコは、岩場を飛んだ。
これは、凄い!
チェコは、くるっ、と身をひねり、泳ぐように上昇を始めた。
岩場に、潰れたプルートゥが倒れていた。
お…。
まさか、と思ったが…。
チェコの決死のダメージ転移は、ギリギリで成功したのだ。
今も、自分の背骨が折れる感触を、ありありと思い出す。
チェコは、断崖の岩壁を滑るように登っていき、五人の仲間の元に戻った。
「チェコ!」
タッカーが、泣きながら叫んでいた。
「やったよ!
プルートゥは、岩に激突してお陀仏だ!」
チェコは喜びを爆発させた!
「よし、ともかく、しっかりした足場まで急ぐんだ」
ヒヨウが号令をかけ、早足で進んだ。
チェコたちは、黒龍山の頂上の岩まで急いだ。
が…。
背後で、どしん、と大きな音がした。
「おっと、止まった方が身のためだぜ…」
キャ、とキャサリーンが叫んだ。
顔面半分が粉々に砕けたプルートゥが、血だらけで、そこに立っていた。




