鍾乳洞
「鍾乳石と言うかな。
天然の芸術作品かな」
チェコたちの持つカンテラの明かりに照らされて、宮殿のような広大な鍾乳洞は、ピンク色に輝いていた。
天井から、幾重にも白い石が連なって、赤い洞窟は生き物の襞のような、滑らかな岩肌を濡れ光らせている。
「足元が濡れているから、注意して歩いてくれ」
ヒヨウの声が、洞窟内にこだまるする。
「素敵なところねぇ…」
キャサリーンは、うっとりと呟いた。
「だいぶ冷えるようだけと…」
タッカーは、腕を抱えた。
「ここを登り切ってしまえば、乾いた石に出る。
そこで、少し暖を取ろう」
ヒヨウは歩きながら言った。
鍾乳洞を歩いていくと、小さな流れにぶつかり、そこを跨いで越えると、地下の巨大なホールに出た。
天井は遥かに高いが、艶やかな鍾乳石のため、よく見える。
何十メートル級の鍾乳石が、幾つも重なって、シャンデリアのようにオレンジ色に輝いていた。
その壁面に、おおよそ十メートルの壁の上に、小さな穴が続いていた。
その純白の壁は、チェコが触ると、ツルツルに濡れていた。
「これは難しいねぇ…」
足をかけるにも、壁面全ては鍾乳石なので、とろり、と丸く、力を入れようもない。
「俺が上からロープを下ろすから、それで登ってくれ」
ヒヨウは簡単に言うと、猿でも無理そうな壁面を、やすやすと登っていく。
「やれやれ。
山の民は道を覚えてしまう、なんて言ってよ。
あんなのエルフにしかできねぇだろう…」
タフタは、溜め息をついた。
ぽろん、とロープが落ちてきた。




