禁足
「ありゃあ、絶対に禁足の森のような中心なんだ。
この山で、一年に一度の神事の時だけ、女王が身を清めるのに使う場所なんだよ」
タフタも言った。
「えー、俺も入っちゃったよ、泥だらけたったから。
だってさっ!
渓流を登れ、ってヒヨウが…」
ヒヨウは唸った。
「まさか、そんな上流まで流れが変わっているとはな…。
大サンショウウオのいる渓流は、本来、温泉とは繋がらない。
あの温泉の水は、魚には毒なんだからな。
それほどの大崩れとは思いもよらなかった」
「…ね、ねぇ、禁足を破ると、どうなるの?」
プーフの身の上を思いだし、チェコは声を震わせた。
「お前は問題ないだろう。
もしかしたらアースが増えるかもしれない、ぐらいだ」
「アース、増えたよ!」
チェコは叫んだ。
「何で小僧は問題ねぇんだ?」
ヒヨウは涼しい顔をして答えた。
「彼はそもそも今日一日、神の許可を得ていたからだ。
成人の儀式として」
あ、とチェコも思い出した。
「成人の儀式?
なんだそりゃ?」
「山の民には知られない理由があり、神は彼に、今日一日の清水の使用を認めていたのだ。
これは古くからの約束だ。
そこは問題はない。
それ以上問うな、山の民」
タフタは肩を竦めた。
「じゃあ問題は、そのお嬢ちゃん、って事か」
「そうだ。
たぶん外の雷は、正真正銘の神鳴り、だろうな」
タフタは頭を抱えた。
「なんてこった!
神鳴りかよ…」
意味の判らないまま、皆はおし黙った。




