エルフ道
「えー! 本当に!
タッカー兄ちゃん、ズゲーよ!
俺、もう諦めていたのに!
あの地震と津波の中で、一体どうやったの?」
ふふん、とタッカーは自己紹介の時のような余裕のある笑みを浮かべて、
「バブルを使ったのさ。
荷物を守り、また僕の浮き輪にもなる。
名案だろ」
「アッタマ良い、タッカー兄ちゃん!」
チェコの服も、スペルボックスも、そして鎖帷子もあった。
チェコは早速鎖帷子を着た。
そして、そのままの姿で、二つのスペルボックスを開き、夢中でカードを見始めた。
そんなチェコの様子に苦笑しつつ、キャサリーンがタッカ-を皆に紹介し、タッカーがヒヨウを紹介する。
「ふん、俺も長いこと樵をやっているが、エルフとまろびとと同道したのは初めてだぜ」
タフタはヒヨウを見上げた。
「エルフは普通、山の民とは距離を置いているからな。
山には様々な秘密があり、そして秘密なのには理由がある。
だから俺たちは、人が歩かぬ道を歩き、人の知らないものと交わる。
だが、この雷雨となれば同道もやむをえまい。
チェコ、ちゃんと服ぐらい着ろ、風邪をひくぞ!」
タフタは目を丸くする。
「それで、そのチェコってのだけは特別なのか?」
ヒヨウは冷静な目で、
「彼は自分の通った道など覚えられない。
山の民なら、覚えてしまう、そういう事だ。
ま、お互いトレースした仲だしな」
チェコはもたもたとキャサリーンの服を着ながらも、床に置いたカードを見続けている。
「うわぁ、チェコ。
黒のカードが増えたねぇ」
タッカーが上から覗き込む。
「うん、ミカさんが自分のカードを分けてくれたんだ…」
チェコは渓流の事を話す。
ん、とヒヨウとタフタは顔を見合わせた。
「神の泉に、足を踏み入れたのか…」
その鋭いヒヨウの語気に、皆が目を見張った。




