洞窟
「どうしたの二人とも!」
チェコが叫ぶと、タッカーとヒヨウは話し出した。
「なにしろ、登るはずたったルートが山津波で潰されてしまっていてな。
そこで緊急に洞窟ルートを通ることにした」
タフタは唸り、
「エルフは、そんなルートまで知ってやがるのか?」
「普通は使わないし、お薦めもしない。
見ての通り、全裸で真っ白だ」
「どゆ事?」
チェコの問いにタッカーが、そそくさスパッツを履きつつ、
「中は毒のあるヒルがいっぱいなんだよ。
道は、まあ、そんなに辛く無かったけどさぁ…」
「この白い粉はヒル避けだ。
そして、この…」
小型犬ぐらいの大きさのトカゲが、今はヒヨウの与えた肉を旨そうに食べていた。
「洞窟トカゲは、俺たちの洞窟案内人という訳だ。
これがいなければ、エルフでも道に迷う迷宮だからな」
ぴちぴちのスパッツを引き上げるタッカーに、
「尻の穴をよく調べておけよ、タッカー。
もし毒ヒルに入られていたら、中で血を吸われて膨れられたら、死ぬ苦しみを味わうことになる。
なにせ、詰まって排泄が出来なくなるからな」
ひっ、とタッカーは、慌てて尻を調べた。
「しっかし、そのトカゲがキリキリの正体って訳か?」
タフタの問いにヒヨウは、
「いや。
キリキリは違うのだが、エルフとキリキリの間には約束があって、これ以上の事は言えない。
このトカゲは、ただの洞窟トカゲ、エルフの呪文で一時的に言うことを聞かせられる、可愛い奴だ」
言うとヒヨウは、洞窟トカゲのロープを解いた。
「ハゥル!」
ヒヨウが言うと、キキキキキキキ…、と鳴いて、トカゲは洞窟に戻っていった。
「そうだチェコ。
君の荷物、持って来たよ」
タッカーが着物を着て、大きな荷物をドスンと置いた。
「タッカーは、あの山津波の中、皆の荷物を守り抜いたんだ!」




