義
「へぇ、どこに行ったの?
北のドワーフに会ったこと、ある?」
チェコはいつの間にか、素に戻ってキャサリーンに聞いた。
アハハ、とキャサリーンは笑い、
「そこまで北に行ったことはないけど、ドワーフには会った事あるわよ。
仕事仲間でボルカというドワーフがいるから。
もう偏屈で偏屈で、大変なのよぅ」
と身振りを交えて話し出す。
ボルカは、トナカイの肉が大好物なので、それをプレゼントすると、話が通りやすいのだ、とキャサリーンは語った。
「その話は筋が通らん、とか、それでは道義に悖る、とかいつも言ってるの。
もともとは軍人だったらしいわ」
「軍人?
あのプルートゥも軍人じゃあ無かった?」
チェコの驚きにキャサリーンは笑い、
「プルートゥは傭兵よ。
どんな汚い手でも使うわ。
ボルカは偏屈だけど、間違っていると思えば仲間にも容赦ない、生粋の武人なのよ」
「西方侯ユリプス様の王宮にも武人はいたかな。
俺ら文官とは仲は良くなかったが、しかし義を重んじるのは同じかな。
あの殺し屋プーフとは違うかな」
ほぅ、と聞くチェコの横で、キャサリーンが飛び上がった。
「ちょっと!
プーフがこの山に来ているの!
チェコは顛末を話した。
「でも土の上に書いた魔方陣って…」
キャサリーンは扉を見た。
風の音や雷鳴は相変わらずだ。
「あ…。
この雨じゃあ消えているかも…」
「マズいわよ。
プーフと言ったら悪魔も同じ、一人でマカロン砦を滅ぼしたって噂よ」
「事実かな」
ウェンウェイが肯定した。




